「仲良くなりたいのに、なぜか距離が縮まらない」。そんな経験はありませんか。実は、人との距離は気持ちだけでは縮まりません。『言語化だけじゃ伝わんない』では、「物理的な距離」と「心の距離」という2つの視点から、人間関係を深める方法を解説しています。(構成/ダイヤモンド社・種岡 健)

「気になる人」と距離を縮める方法・ベスト1

「気になる人」と距離を縮める

「もっと仲良くなりたい」

 そう思っている相手がいても、なかなか距離が縮まらないことがあります。
 恋愛でも、職場でも、友人関係でも同じです。

 相手に嫌われているわけではない。
 でも、どこか壁がある。

言語化だけじゃ伝わんない』では、その原因を「距離感」という視点から説明しています。

 私たちは、人との距離を「気持ち」の問題だと思いがちです。
 しかし、本当に重要なのは、「一緒に経験を共有しているかどうか」なのです。

距離が近くても、心は離れてしまう

 本書では、著者自身の結婚生活を例に、こんな話が紹介されています。

妻と結婚してから増えたもの。
それは、「コミュニケーションについて考える機会」でした。
同じ家に住んで、毎日顔を合わせるのだから、「物理的な距離」はとても近いはず。
それなのに、毎日忙しく仕事ばかりしていると、あるときふと「心の距離」が遠くなっていることに気づくのです。
「あれ、パッと話せることがなくなってるぞ?」
「何を考えているかわからなくなっているぞ?」と。
――『言語化だけじゃ伝わんない』より

 これは夫婦だけの話ではありません。
 毎日会社で顔を合わせる同僚でも起こります。

 学生時代に毎日会っていた友人も、卒業して何年も連絡を取らなければ、話題が見つからなくなるでしょう。
 物理的に近くにいることと、心の距離が近いことは別なのです

 逆に、海外に住んでいても頻繁に連絡を取り、お互いの近況を知っている人とは、不思議なくらい自然に話せることがあります。

 距離を決めるのは、何メートル離れているかではありません。
「共通の話題」がどれだけあるかです。

共通理解は、放っておくと減っていく

 本書では続けて、このように説明しています。

お互いに仕事が忙しいと、一緒に出かけたり食事をする機会がなくなっていきます。
会話の機会がなくなると、相手が「いまどんなことを考えているか」がわからなくなります。
1日だけなら何も問題はないでしょう。
これが1週間、1ヶ月、1年……と積み重ねていくと、「共通理解」が徐々になくなっていくのです。
距離感には2つあります。
「心の距離感(心理的な距離感)」と「本当の距離感(物理的な距離感)」です。
――『言語化だけじゃ伝わんない』より

 ここで重要なのは、「共通理解は自然に減っていく」という考え方です。
 人間関係は、一度仲良くなったら終わりではありません。
 学生時代の友人でも、何年も会わなければ、お互いの仕事も趣味も価値観も変わります。

 昔は何時間でも話せた相手なのに、「最近どう?」だけで会話が止まることもあります。
 これは仲が悪くなったからではありません。
 共通理解が減っただけなのです

 だから、人間関係を維持するには、新しい共通体験を増やし続ける必要があります。

 一緒に映画を見る。旅行へ行く。同じ本を読む。同じニュースについて話す。
 こうした小さな共有が、「共通理解」という貯金になっていくのです。

「同じ場所」に行くこと

 では、どうすれば距離は縮まるのでしょうか。
 本書では次のようにまとめています。

初対面の人同士の集まりでたまたま隣に座った人や、同じグループに振り分けられた人は話しかけやすくなります。
物理的な距離が近くなると、話すきっかけができるということです。
お互いの共通点が見つかれば、自分が思っていることを相手に伝えやすくなります。
そうやって、心の距離も近くなっていくのです。
思っていることを話してさらに共通点が見つかれば、さらに距離は縮まります。
「同じことを思っていた!」ということが、2人をさらに近づけるのです。
親友や恋人になり、結婚して家族になったりもします。
でも、距離感が近くなったらもう問題ないかというと、そうではありません。
距離感は何もしないでいると、遠ざかっていくからです。
――『言語化だけじゃ伝わんない』より

 ここには、人間関係の本質があります。
 多くの人は、「もっと面白いことを話さなきゃ」「会話術を身につけなきゃ」と考えます。

 でも、本当に大事なのは話術ではありません。
 話すきっかけを増やすことです

 だから、気になる人との距離を縮めたいなら、まずは同じ場所へ行くこと。
 同じイベントに参加する。同じ趣味を始める。同じ景色を見る。同じ経験をする。

 そうすると、「この前のアレ、面白かったね」という共通の話題が生まれます。
 話題は、自分でひねり出すものではありません。

 一緒に経験したことの中から自然と生まれるものなのです。

距離は「維持するもの」ではなく「育てるもの」

言語化だけじゃ伝わんない』が伝えたいのは、「人間関係は完成しない」ということです。

 恋人になっても、結婚しても、親友になっても、それで終わりではありません。
 共通理解を増やし続ける努力をやめれば、心の距離は少しずつ離れていきます。

 反対に、ほんの短い時間でも、一緒に新しい体験を積み重ねていけば、心の距離はまた近づいていきます。
 人との距離を縮める一番の近道は、うまく話すことではありません。

 同じものを見て、同じことを感じ、共通理解を増やしていくことです
 その積み重ねこそが、「気になる人」と自然に距離を縮める、最も確実な方法なのです。

(本記事は、書籍『言語化だけじゃ伝わんない –––– 絵を描くように「考える・伝える」技術』を元にしたオリジナル記事です。)

ヤギワタル
1981年静岡県生まれ。制作会社にて、雑誌タイアップ広告の制作進行を務めたのち、フリーランスのライターを経験。国際情勢関連の英日翻訳をやりながら、2011年からイラストレーターの活動をスタート。現在は書籍・雑誌・広告など幅広く活動中。特に、ビジネス書や新書での挿絵や図解を担当することが多く、10年以上、活躍している。
これまで、装画・イラストを担当した書籍は200冊以上。『言語化だけじゃ伝わんない –––– 絵を描くように「考える・伝える」技術』(ダイヤモンド社)が初の単著となる。