若者と話すとき、「最近の若者はSNSが好きなんだろう」と話を合わせようとしていないでしょうか。実は、それではまだ解像度が低すぎます。世代の違う相手と会話を成立させるには、「若者」を知るのではなく、「その人が見ているもの」を知ることが重要です。本記事では、人気イラストレーターのヤギワタル氏の書籍『言語化だけじゃ伝わんない――絵を描くように「考える・伝える」技術』をベースに、ビジネスパーソンにも役立つノウハウを紹介する。(構成/ダイヤモンド社・種岡 健)

40代のオジサンが若者に話を合わせる方法・ベスト1

若者に話を合わせる方法

 職場の若手と話していて、こんな経験はないでしょうか。

「最近、何が流行ってるの?」
「やっぱりTikTokとか見るの?」
「若い人はテレビ見ないんでしょ?」

 こちらとしては、若者に歩み寄っているつもりです。
 しかし、会話はいまひとつ盛り上がらない。

 なぜなら、「若者」という大きなカテゴリーを見ていて、目の前にいるその人を見ていないからです。
 20代だからといって、全員が同じものを見ているわけではありません。

 若者と話を合わせるために必要なのは、若者文化を勉強することではないのです。

「若者は何が好き?」では広すぎる

 相手を理解するには、相手の頭の中にどんな知識や経験があり、それらがどうつながっているかを知る必要があります。

 では、どうすればそれがわかるのでしょうか。

「相手が持っているネットワークを知らないといけない」
一体どうしたら、相手のネットワークなんてものを確認できるのでしょうか。
その答えは、「相手と同じものを見ること」です。
相手がどんなネットワークを持っているかはわかりません。
でも、どんなものを見ているかは聞けばわかるはずです。
だから、そもそもコミュニケーションとは、相手に関心を持っていることが前提です。
関心のない相手とのコミュニケーションは成立しないのです。
――『言語化だけじゃ伝わんない』より

 大事なのは、「若者について知ろう」とすることではありません。
「この人について知ろう」とすることです
「若者は何を見ているんだろう」と考えれば、答えは「SNS」くらいの大きさになってしまいます。

 しかし、「目の前にいるこの人は何を見ているんだろう」と考えれば、質問は変わります。

 最近よく見ているYouTubeチャンネルは何か。
 TikTokでは誰をフォローしているのか。
 どんな漫画を読んでいるのか。
 どんなゲームをしているのか。

「最近、何見てる?」と聞いて、相手の世界を具体的に知っていく

 そこから会話は始まります。

「SNSを勉強する」では足りない

 世代の違う相手を理解しようとすると、私たちはついカテゴリーで捉えます。

「Z世代について知ろう」
「最近のSNSを勉強しよう」
「若者の流行を押さえよう」

 しかし、それではまだ大ざっぱです。

まず、相手と同じものを見ること。
それが、相手の頭の中を探る手がかりになります。
最初に押さえたいのが、「固有名詞」です。
たとえば、若者を理解しようとしたとき。
「若者はSNSを見ている。だから、SNSを見なければいけない」と思うだけだと、若者とは見るものがズレてしまう可能性が高い。
Xなのか、TikTokなのか。そこで何を見ているのか。
これがわからなければ、同じものを見たことにはなりません。
――『言語化だけじゃ伝わんない』より

 たとえば、「TikTokを見ています」と言われても、まだ広すぎます。

 ダンス動画を見ている人もいれば、料理動画を見ている人もいる。芸人の切り抜きを見ている人もいれば、投資や仕事術の動画を見ている人もいるでしょう。

 同じTikTokでも、見えている世界はまったく違います

 だから、一歩踏み込む。

「TikTokで誰を見てるの?」
「どの動画が面白かった?」
「その人って、どんな人?」

 ここで初めて、相手が見ている世界にピントが合い始めます。

会話がうまい人は「固有名詞」を拾う

 そのために重要なのが、「固有名詞」です。

たとえば、次の一文に、どんな固有名詞が出ているでしょうか。
「漫画家の水木しげるは、太平洋戦争中、陸軍の兵士としてラバウルに派遣された体験をもとに、『ラバウル戦記』という作品を描いた」
どうでしょう。固有名詞は、水木しげる、太平洋戦争、ラバウル、『ラバウル戦記』です。
もし固有名詞をなくしたら、この文章は、「ある漫画家が、ある戦争に行き、陸軍兵士として、ある場所に派遣された体験をもとに、漫画を描いた」となります。ぼや~っとなっているのがわかるでしょうか。
ピントがズレて、ぼやけています。
これでは同じものを見ようとしても、具体的に何を見たらいいかがわかりません。
同じものを見る、というのは、似たようなものを見るという意味ではありません。
本当に、具体的に、同じものを見るのです。

――『言語化だけじゃ伝わんない』より

「漫画が好きです」
「YouTubeを見ます」
「音楽が好きです」

 ここで会話を終わらせてはいけません。
 何の漫画なのか。誰のYouTubeなのか。どのアーティストなのか。
 固有名詞まで聞けば、その人が見ている「実物」にたどり着けます

 しかも今は、その場で検索できます。

「それ知らない。ちょっと見せてよ」

 そう言って、相手が見ているものを一緒に見ることができるのです。

知ったかぶりをするより、「教えて」が強い

 ここで40代がやってしまいがちなのが、無理に若者文化を知っているフリをすることです。

 相手が知らない固有名詞を出したときに、「ああ、なんか知ってる」「最近流行ってるやつでしょ」と、曖昧な知識で乗り切ろうとする。

 しかし、それでは相手と同じものを見たことにはなりません。
 むしろ、「知らないから教えて」と言ったほうがいい

「それ、誰?」
「どこが面白いと感じてるの?」
「一番好きな動画、教えてよ」

 相手に関心があれば、知らないことは弱点ではありません。
 会話の入口になります。

 そして、実際に同じ動画を見れば、次からは「あの人」「あの動画」が通じるようになります
 共通のネットワークが、ひとつできるのです。

「若者」を理解しなくていい

 40代が若者と話を合わせようとして、流行語を覚える必要はありません。
 若者向けのランキングを片っ端からチェックする必要もありません。

 必要なのは、目の前にいる人に関心を持つことです

「最近の若者は何が好きなのか」ではなく、「あなたは何が好きなのか」。
「若者は何を見ているのか」ではなく、「あなたは何を見ているのか」。

 そして、固有名詞が出てきたら、そこで止めずに実際に見てみる。

「相手と同じものを見る」。それが、世代の壁を越える最も簡単な方法です。

 話を合わせるとは、相手の世代に無理やり合わせることではありません。
 相手が見ている世界に、少しだけ入ってみることなのです。

ヤギワタル
1981年静岡県生まれ。制作会社にて、雑誌タイアップ広告の制作進行を務めたのち、フリーランスのライターを経験。国際情勢関連の英日翻訳をやりながら、2011年からイラストレーターの活動をスタート。現在は書籍・雑誌・広告など幅広く活動中。特に、ビジネス書や新書での挿絵や図解を担当することが多く、10年以上、活躍している。
これまで、装画・イラストを担当した書籍は200冊以上。『言語化だけじゃ伝わんない –––– 絵を描くように「考える・伝える」技術』(ダイヤモンド社)が初の単著となる。