「楽しく働いてくれれば、それでいい」。部下を思いやって、そんな言葉をかける上司がいます。しかし、その優しさが部下から「仕事で通用する力」を奪っているとしたらどうでしょうか。いい上司とは、目の前の部下をラクにさせる人ではありません。では、部下を「使えない社畜」にしてしまう上司には、どんな特徴があるのでしょうか。この連載では、書籍『リーダーの仮面』をベースに、全ビジネスパーソンに必須の「リーダーシップ」のあり方について指南する。(構成/ダイヤモンド社・種岡 健)

部下を「使えない社畜」にしてしまう上司の特徴・ワースト1Photo: Adobe Stock

「使えない社畜」を生む上司

「無理に成長しなくてもいい」
「楽しく働いてくれれば、それでいい」

 部下を思いやって、そんな言葉をかける上司がいます。

 たしかに、部下からすれば優しい上司に見えるでしょう。しかし、その優しさが、5年後、10年後の部下から「仕事で通用する力」を奪っているとしたらどうでしょうか。
 いい上司とは、目の前の部下をラクにさせる人ではありません

 では、部下を「使えない社畜」にしてしまう上司には、どんな特徴があるのでしょうか。

ワースト1:「ラクに働きたい」を真に受ける

リーダーの仮面』で、私は次のように書きました。

「リーダーについていきたいかどうか」は、すべて「自分にとって利益があるかどうか」で決まります。
部下がそのリーダーの下にいることが自分にとって「利益」だと判断すれば、「ついていきたい」となります。
「利益にならない」と思えば、いい人であっても、ついていきません。
――『リーダーの仮面』より

 上司は、部下から好かれることを目指してはいけません。
 部下にとって本当に必要なのは、「優しい上司」ではなく、自分に利益をもたらしてくれる上司です

 もちろん、「利益」とは給料だけではありません。

 仕事を通して能力が上がる。
 以前より大きな仕事ができる。
 成果を出して評価される。
 市場価値が高まる。

 こうした成長も、本人にとって大きな利益です。

「厳しい上司」がいい上司になることもある

本当についていきたいと思われるリーダーは、「利益をもたらしてくれる人」です。
仕事に厳しくても、「数年後には成長できるはずだ」と、利益を感じさせることが大事です。
部下は、友達や恋人を探しに会社に来ているわけではありません。
ビジネスをしに、稼ぐために来ているのです。
――『リーダーの仮面』より

 目の前の部下に嫌われたくない。
 そう思えば、厳しいことは言いにくくなります。

 しかし、上司が指摘を避ければ、部下は同じ失敗を繰り返します。少し難しい仕事を任せなければ、できる仕事も増えません。
 その結果、5年、10年と会社にいるのに、社外では通用する能力が身についていない。

 それこそが、「使えない社畜」を生み出すマネジメントです。

 本当の優しさとは、部下の現在の気分をよくすることではありません。
 将来の部下に利益を残すことなのです。

「楽しく働きたい」を真に受けない

もしかしたら、部下は口では、「楽しく働ければ、それだけで満足です」「ラクに働ければ、成長しなくてもいいです」と言うかもしれません。
しかし、その言葉を真に受けてしまっては、リーダー失格です。
本当に楽しいことをやりたいだけなのであれば、それはプライベートで友達や恋人と遊んで楽しんでいるはずです。
「ラクに働けるほうがいい」と本心で思っているだけなのであれば、責任の少ないフリーターなどの働き方をしているはずです。つまり、どちらもリーダーが考えるべき問題ではありません。
それに、部下も本心では「楽しいだけじゃダメ」「ラクなだけじゃダメ」とわかっているはずです。
人は、つねに言行一致しているわけではありません。
本音と建前があります。リーダーの仮面も、まさに建前を利用したマネジメント方法です。
組織に所属している以上、本心では「成長意欲があること」を前提にリーダーはマネジメントし、部下を「使えない社畜」にしないようにすべきです。仮面をかぶり、「利益が何か」を見極めましょう。
――『リーダーの仮面』より

 人は誰でも、目の前だけを見れば「ラクなほう」を選びたくなります。

 難しい仕事より、簡単な仕事。
 厳しい指摘より、優しい言葉。
 高い目標より、簡単に達成できる目標。

 しかし、それをすべて認めることが、部下のためになるとは限りません。
 リーダーは、部下の言葉をそのまま受け入れるのではなく、「この人にとって長期的な利益は何か」を考える必要があります。

「仮面」をかぶり、厳しさと向き合う

 部下を「使えない社畜」にしてしまう上司。
 その特徴は、部下の「ラクに働きたい」という言葉を真に受け、目の前の快適さばかりを与えることです

 いい上司は、部下をラクにする人ではありません。
 仕事を通して成長させ、数年後に「この上司の下で働いてよかった」と思える利益を残す人です。
 目の前で好かれることより、未来の部下にとってプラスになることを選ぶ。そのために、リーダーになった瞬間から仮面をかぶる必要があるのです。