さらにいえばこうした選ばない消費を後押ししているのが、「どれを選んでも大きな失敗はない」という商品やサービスの質に差が少なくなっている状況です。
選ばない消費には「便利さ」だけでなく、もう1つの大きな魅力があります。それは、エンターテインメント性です。
たとえば前述の「旅ガチャ」はカプセルに航空券が入っている商品ですが、「どこに行けるか分からない」こと自体が最大の売りです。従来、旅行といえば「夕日がきれいなビーチリゾートに行ってみたい」「あのお寺に行ってみたい」といった目的があってするものでした。それが今や、行き先が不明という不確実性そのものがむしろ魅力になっており、ここには価値観の大きな反転があります。
何が出るかわからない
不確実性がSNSと相性抜群
背景にはいくつかの変化があるでしょう。
1つは、価格が高い=良質という従来の尺度が崩れてきたことです。バブル期とは違い、今は安価であっても十分に満足できる商品やサービスがあふれています。ユニクロに代表されるように、安くて良いものが当たり前になったことで、「目的地がどこか分からない」といった不確実性を含む体験にも、安心して手を伸ばせるようになったのかもしれません。
旅ガチャの場合も、「まったく何もない場所に行かされるのでは」という心配はほとんどありません。むしろ、知る人ぞ知る地域の魅力や観光資源に出会えるという、少し通好みな体験が期待されているのです。
もう1つは、SNSとの親和性です。
昨今は「旅ガチャで、こんな場所が当たった!」と投稿すれば、意外性や驚きが話題になります。ここでの「こんな」は、ひどい場所だったということではなく、自分で選んでいたら絶対に行かなかったというような意外性を指しています。
一方で意外性は別のアピールとして反転します。不景気が長引く中では、バブルの頃にはあまり見られなかった自虐が、1つの表現として定着しました。SNSでは「こんなきれいな景色を見てきた」「こんなおいしいパスタを食べた」といった投稿だけでなく、「有名なパン屋さんに行ったら定休日だった」「お気に入りの服を着て出かけたら、同じ服の人とすれ違った」といった、少し残念な出来事を笑いに変える投稿も、むしろ共感を集めています。







