フロム・ソフトウェアから海外販売委託を受けている「ELDEN RING SHADOW OF THE ERDTREE」の販売も好調で、2024年度第2四半期決算は最高益に終わったバンダイナムコホールディングス。ゲーム事業会社のバンダイナムコエンターテインメントを率いる宇田川南欧社長は、多数の自社開発および他社IPを両輪で回すことこそがバンナムの強み、と話す。特集『50兆円をゲットだぜ!日本のゲーム』(全25回)の#20では、2023年に社長に就任した宇田川氏に、その将来戦略についても語ってもらった。(ダイヤモンド編集部 鈴木洋子)
400を超えるIPをポートフォリオ運用し
それぞれその価値を最大化していくことが重要
――社長就任後1年半たちました。これまでの経営の振り返りをお願いします。
第2四半期は最高益でしたが、2024年3月期は目標未達でした。バンダイナムコグループは今、社員一丸となって事業の立て直しを進めている最中で、これからもっと良くなる、その途中にあると認識しています。
バンダイナムコグループの事業は、「IP(知的財産)の世界観に対するファンの人たちの思いを価値に変えて届けていく事業」です。つまりIPの世界観や特性を生かし、最適なタイミングで最適な商品サービスとして、最適な地域に向けて提供することで、IPの価値を最大化すること。これを「IP軸戦略」と呼んでいます。「短期的に業績の波はありますが、中長期にわたってこのIP軸戦略に沿った事業をいかに継続していくかが大事です。
ゲームは波がある事業です。それがヒットビジネスの宿命であり面白さの一つではありますが、その面白みをこれからも継続しつつ、業績をなるべく平準化し右肩上がりにしていきたい。そして極力リスクを減らすことをやっていきたいと考えています。
ヒット作はどんどん出していきたいですね。売り上げを伸ばせば、それだけたくさんのお客さんにIPを届けられるので利益のみならず売り上げも大事にしています。その中でも、一過性のものにしたくないので、どのようにして売れたかをしっかり検証することが必要です。セール対象にしたのでたくさん売れた、というのは簡単ですが、そうではなくて、一個一個、IPやキャラクターにどのやり方が合うのかを考え、落とし込んで、提供するのが大事です。
――自社開発タイトルと他社開発タイトルの販売・マーケティング事業のバランスはどのように考えていますか。
どちらも大切で、特定の割合でやるとは決めていません。時期に応じてバランスが変わることもありえます。「お客さんに対しどんな価値を出せるか」を基に、最適なやり方で臨むだけです。
当社は本当に協働が多いんです。基本的にマルチプラットフォーム展開ですし、いろいろな会社と組んでビジネスをするのが普通です。
その一方で、内製開発は強化しています。これは、グループの制作力を向上させてゲーム会社としての強みにつなげるのが目的です。ここは戦略的に、IP軸戦略に沿って強化していきます。
――大手ゲーム会社からなかなか大型の新作が出てこない問題が指摘されています。
新作を出して新しい驚きをお客さんに伝えることも大事ですが、既存のIPやタイトルを継続展開していくことも、長くビジネスをしていく上で同じように大事。どちらも両輪でやっていく必要があります。
そもそも当社はゲームの数が多いことも特徴です。扱うIPは400以上あります。数百万本売れる、費用がかかる壮大なタイトルも、小粒で小回りの利くものもある。そうしたポートフォリオを組み、きちんと計画に落とし、それを確実に遂行するための管理指標を作る。さらにその達成・進捗を経営陣のみならず、現場で開発や販売を担当した人たちが同じものを定期的に見られるようにしています。社内で情報を包み隠さず共有し、ノウハウを共有して、横のつながりで効率化や素材の共有なども図っていくのが狙いです。
「ドラゴンボール」「ガンダム」など日本を代表するIPをゲーム展開するとともに、他社制作の「ELDEN RING」の海外マーケティングでも大きな収益を上げたバンダイナムコエンターテインメント。国内では任天堂に続く規模のグループに成長したが、その次世代戦略をどのように描いているのか。次ページからより詳しく見ていこう。