世界1200都市を訪れ、1万冊超を読破した“現代の知の巨人”、稀代の読書家として知られる出口治明元APU学長。出口氏が世界史を背骨に日本人が最も苦手とする哲学と宗教を体系化した『哲学と宗教全史』は、宮部みゆき氏(直木賞作家)や池谷裕二氏(東大教授)など多くの論客から絶賛されている。哲学と宗教の視点から見る「苦しみに飲み込まれないブッダの教え」とは? ライターの照宮遼子氏が報告する。(構成/ダイヤモンド社・寺田庸二)

【ブッダが教える】物価高で余裕が削られる今、苦しみに飲み込まれない考え方Photo: Adobe Stock

余裕のなさに気づく日々

 久しぶりに、子どものころによく食べていたお菓子を買おうとした。
 昔は100円くらいで買えた記憶があったが、売り場で値段を見ると200円近くになっていた。もちろん、何十年も経っているのだから、値段が上がるのは不思議なことではない。

 しかし、こうした場面は増えているように感じる。
 いつも買っていた食品が高くなり、量が減り、以前と同じ感覚では買えなくなった。
 収入はそれほど変わらないのに、生活費は上がっていく。いつまで経っても余裕ができず、ただ日々をやりくりするだけで精いっぱいになる。

苦しい日々を生き抜く「ブッダ」の教えとは?

 そんな終わりの見えない苦しさを思うと、『哲学と宗教全史』(出口治明著)に書かれたブッダ(BC566~BC486)の思想が、今の時代にも重なって見えてくる。

日々の生活の中で正しい行いを維持することの難しさに耐えて、それを実行する強い意志が、人を輪廻転生の苦しみから抜け出せる人格に導くのだと、教えたのです。
――『哲学と宗教全史』より

 古代インドでは、人は死後も別の生を受け、老いや病、死を何度も経験すると考えられていた。生きることの苦しさは、一度の人生で終わるものではなかったのである。

 ブッダは、苦しみから抜け出す道を、特別な奇跡ではなく、日々の行いの中に見いだした。苦しい状況に流されず、欲や執着に振り回されない生き方を続けることが、人を苦しみの連鎖から離れさせると考えたのである。

苦しみとの向き合い方で変わる!

 物価が上がり、以前と同じ暮らしをしているだけで余裕が削られていく。
 そんな時代には、苦しさをなくすことだけでなく、苦しさに飲み込まれない考え方が必要になる。

 本書は、宗教や哲学が生まれた背景を紹介しながら、現代の暮らしとのつながりまで読める本である。
 いつまで経ってもラクにならないと感じる人に、日々の暮らしの中で自分を見失わない視点を与えてくれるだろう。