それは主義? はたまた事情?? 「AかBか」という主義が分かれそうなトピックをあらためて考える、人気エッセイストの古賀及子さんによる書き下ろし新刊『暮らしの信じ方』より抜粋・再構成して公開します。(構成/ダイヤモンド社書籍編集局)

暮らしの信じ方Photo: Adobe Stock

前回≫8/6公開、もしも世界が変わっても、朝に起き出し夜眠りたい【朝か夜か・古賀及子さん書き下ろし(2)】

もし二十時二十分登校だとしたら

 子どもたちが、中学校と高校に通っている。どちらの学校も、八時二十分くらいまでに登校する決まりだ。

 たまに考えるのが、これが昼夜あべこべに、二十時二十分までに登校するスタイルだったら……という“もしも”だ。

 私は八時二十分の登校時間はばりばりに余裕で間に合うけれど、もし二十時二十分登校だとしたら、遅刻はせずとも、授業開始一時間たらずでもう眠くなってしまうわけだ。

 八時二十分にはじまった学校生活は、給食をはさんで時間割により十四時だとか十五時に終わる。いっぽうで二十時二十分にはじまった学校は、夜中の十二時すぎに夜食を食べて、そのあと真夜中の二時や三時に終わることになる。

 絶対に無理だ!

夜型だったら、らんらんとして楽勝のはずだ

 私の家では息子と私が朝型ないっぽう、娘が夜型を誇る。

 娘は学校のある平日の朝、登校時間に間に合うぎりぎりの時間まで眠る。

 声をかけるとまだしばらくまどろみ、それからうっとおしそうに、どろどろした背骨のないスライムのような生命体として起き出す。椅子に腰掛けるというよりもほとんど引っ掛かるみたいな座り方からじわじわと、背骨を見つけて積み上げるように尾骨からひとつずつ立ち上げていく。

 そこから頭もぎりっと覚醒させ、顔を洗って身だしなみを整えて、最後は飛び出して駆けて出かけて行くのだから、大したものだと毎朝感心する。

 もし私と息子が夜二十時二十分に学校がはじまるパラレルワールドに転生したら、相当苦労をするだろう。授業中に居眠りをしては教師にチョークを投げられるはずだし(パラレルワールドであっても、令和であればそんな先生はいないかもしれないけれども)、私などは真夜中の給食は胸がつかえて食べられない。これが娘だったら、らんらんとして楽勝のはずだ。

私はとにかく朝起きて、夜寝ないとやっていかれない体なのだ

 近ごろ、私立高校を中心に、朝の苦手な生徒への配慮の意味も含めたさまざまな理由から、始業時間を遅らせる学校が増えていると聞いた。

 思春期は生理的に夜型傾向が強まるという研究結果もあるようだ。コロナ禍の分散登校を経て、授業開始の後ろ倒しでも十分に学校運営が回ることが実証されたのも後押しになったという。

 早起き推奨の歴史は長い。各国で古くから、日本でも江戸時代の健康指南本に「早寝早起きは養生の基本」とあったそうだ。昨今、そのあたりがじわじわと揺るがされつつあるわけだ。

 朝型や夜型といった、個人のリズムのタイプのことを、クロノタイプという。それぞれのクロノタイプに合わせた生き方が推奨されて、みんなが体質に合った起床時間、睡眠時間ですごせるようになる、そんな新しい未来を願いながら、私はいよいよぞっとする。

 夏の日中はとにかく暑い。このまま行くと、サマータイムが一時間とは言わず、ぐぐっと半日ずらす感じで制定されるみたいな時代が来やしないか。まさに、学校の始業時間が二十時二十分になる未来だ。

 私はとにかく朝起きて、夜寝ないとやっていかれない体なのだ。海外に行けば時差ぼけもまともにくらう体質で、睡眠時間を器用にずらすのも下手なんです。

 今日からみなさんすこしずつ、昼夜を逆転させましょう。規則正しく、遅寝遅起きの生活に慣れていきましょう。

 そんな世界がもし来ても、私はきっと、朝に起き出し夜眠るだろう。

(おわり)