「人生をもっと面白くしたい」と思ったとき、多くの人は「何を始めようか」と考える。しかし、本当に人生を楽しんでいる人は、意外にも別のことから始めている。新しい挑戦や経験を増やすこと以上に、毎日を豊かにするために欠かせないものがあるのだ。では、それは何だろうか。話題の書『人生は気づかぬうちにすぎるから。』から、その考え方を紹介する。(構成/ダイヤモンド社書籍編集局)

人生を面白くするために「行動」よりも大切なことPhoto: Adobe Stock

自分が何に心を動かされるのかを知る

「毎日をもっと面白くしたい」
そう思うと、新しい趣味を始めたり、行ったことのない場所へ出かけたりと、とにかく行動を増やそうとする人は多い。

もちろん、行動することは大切だ。
しかし、自分が何に惹かれるのかもわからないまま予定だけを増やしても、心はなかなか満たされない。

人によって、心が動く瞬間は違う。
知らない街を歩くことかもしれない。誰かと深く話すことかもしれない。何かをつくることや、ひとりで静かに過ごすことかもしれない。

だからこそ人生を面白くするために、行動よりも先に大切なのは、自分が何に心を動かされるのかを知ることだ。

他人の目は気にしない

そのヒントになるのが、次のエピソードである。

オランダに住むヤン・ムルは、20年間、毎週水曜日に自宅から電車に乗ってアムステルダムのスキポール空港に行き、そこから飛行機に乗ってヨーロッパの他の都市を訪れることを習慣にしてきた。目的地はたいていストックホルムだったが、バルセロナやヘルシンキ、ハンブルクのときもあった。到着すると、空港のターミナル内を1、2時間歩き回り、それからアムステルダム行きの飛行機に乗って帰途に就いた。それが彼の旅の目的だった。現地で観光もしないし、土産物を買ったりもしない。
ヤン・ムルは、20年間、ほぼ毎週これを繰り返した。フライトの回数は、実に合計1000回以上に及ぶ。毎回、窓側の席を選び、上空3万フィートから下界を眺め、空港ターミナル内を歩き回るという同じ儀式を繰り返した。
このエピソードを聞いて、「なんてもったいない。移動だけして、本当の旅をしないなんて」と思う人がいるのはよくわかる。だがもちろん、その人たちはヤン・ムルではない。彼にとっては、この毎週の儀式は幸せなものだった。ムルは空を飛ぶのが好きで、この「どこにも行かない旅」によって得られるささやかな冒険の感覚を楽しんでいたのだ。
ムルにとって、この習慣は生活の一部だった。目的地を気にしていなかったため、一番安いフライトを予約できた。また、日帰りで移動するので、自宅を長く離れる必要もなかった。
私はこれから何をしようか考えているとき、よくこの話を思い出す。そして、思わず笑顔になる。私も、特に旅先で何をするかを決めずに気ままに旅をするのが好きだ。それに、彼のエピソードからは別の意味でも刺激を受ける。多くの人とは違い、ヤン・ムルは自分にとって何が幸せかを知っていて、それを追求するのを恐れなかった。また彼は、他の目的のための手段としてではなく、純粋に楽しむために旅をした。私はそこに惹かれるのだ。

――『人生は気づかぬうちにすぎるから。「自分第一」で生きるための時間術』より

人生を面白くするために必要なのは、誰かが「いい」と言うことをすることではない。
自分にとって、どんな時間が楽しいのか。何をしているときに、心が少し弾むのか。

まずは、それを知ることだ。
周囲から見れば意味がないように思えることでも、自分にとって心が動くなら、それは人生を豊かにする大切な時間になる。

行動を増やす前に、自分の心が向かう先に目を向けてみよう。そこにこそ、毎日を面白くするヒントがある。