「地頭」を鍛えたいと思っても、今さら変えられないものと思われがちだ。だが、多くの社員を育成してきた東証プライム上場社長の木下勝寿氏は新刊『地頭スイッチ』で、「地頭はセンスではない。スイッチの押し方さえわかれば変えられる。AI時代になればなるほど『地頭』が重要になる」という。ライター小川晶子氏がレポートする「上司から評価される人と評価されない人の差」とは? (構成/ダイヤモンド社・寺田庸二)

「上司の指示通りにやったのに……」評価されない人の特徴・ワースト1Photo: Adobe Stock

やってしまった「恐怖の大失敗」

いまでも夢でうなされる失敗がある。
商社に勤めていた頃、「5000名の顧客にセールのハガキを出す」という仕事を任された。

顧客データを見て、最近の来場実績、購買実績に基づき、「お得意様」に対してハガキを出すべきところである。

しかし、「とにかく5000名にハガキを出せばいい」と考えた私は、グループ分けされたリストの数をうまく組み合わせて5000になるようにした。
その結果、恐ろしいことが起きた。
セール会場が閑散としてしまったのだ。私も応援に行っていたのだが、ヒマだった。
セールを心待ちにしているお得意様にハガキを出さず、ただリストに載っているだけの人ばかりにハガキを出してしまったらしい。
完全に私のミスで大きな損失を出してしまった。
思い出すと恐怖で震える。
「ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい……!」ブルブル。

課題の「真の目的」を把握せよ

こんなありえないようなミスがどうして起こるのだろうか。

ベストセラー著者でカリスマ経営者の木下勝寿氏による『地頭スイッチ』にズバリ書かれている。

課題の「真の目的」を正しく把握していないからです。
――『地頭スイッチ』より

本書で「よくある例」として示しているのが、「ダイエット食品の無料サンプル申込者数を最大化する」という仕事に対し、単に「無料サンプル申込者が増えればいい」と考えて「無料」を大きく打ち出してしまうというもの。
無料だからもらっておこうという人が増えれば、購入につながる率が下がる。
本来は商品を継続的に購入してくれる顧客を獲得すべきであり、それが「真の目的」だ。
「真の目的」を正しく把握せず、「与えられた課題はちゃんとこなしました」と言っても評価されるはずがないという話である。

まさに過去の私がやってしまったことだ。

「真の目的」からズレてしまう理由

本書では、単に「真の目的を考えなさい」と言うのではなく、こうしたズレが起きる原因を詳しく掘り下げて解説している。

上司が示す「サンプル申込者数の最大化」という指示の真の目的は「売上を増やす」ことだ。
だからといって「売上が伸びるなら、サンプル申込者数は少なくてもいいよ」と伝えると、部下の行動量は減ってしまう。
部下は「購入意欲の高い客に集中すれば、件数は少なくても評価される」と考えるからだ。そして結局、成果が出ない……というのは十分ありうる。

仕事には「質」と「量」という両面があります。
しかし、「質」の結果は見える化しにくいため、間違っていてもわかりません。
よって計測可能な「量」で指示するのです。(中略)
上司は「売上を増やす」という真の目的のためにわかりやすい手前の目標を設定し、部下は手前の目標を達成することだけに集中して真の目的を見失う。このすれ違いこそ、目的や目標を互いに把握できていない悲劇。まさに「木」を見て「森」を見ずの状態です。
――『地頭スイッチ』より

こうした構造があることを理解して、常に「真の目的」を意識しながら動ける人が評価されるのである。