「ローリスクで、コツコツ確実に儲けたい」。そう考える個人投資家は多いだろう。『ウォーレン・バフェットはこうして最初の1億ドルを稼いだ』には、若き日のウォーレン・バフェットが徹底した調査と一手間の工夫で1万3千ドルの利益を得た手法が記されている。本連載では、本書の内容から、ウォーレン・バフェットの投資術をお伝えしていく。(構成:ダイヤモンド社書籍編集局)

資産が増えていくイメージPhoto: Adobe Stock

その“確実な儲け”の罠

 「誰が見ても確実に儲かる」。投資でそんな話を聞いたら、あなたはどう動くだろうか。確実だからこそ安心して飛びつきたくなる。だが、その“確実さ”の裏に、もっと大きな利益が隠れていることがある。

 本書には、目先の確実な儲けに満足せず、さらに大きな果実へと変えた若き日のバフェットの実例がある。誰にも愛されない割安株にこそ機会は眠っている――本書が伝えるのは、そのきわめて地道な視点だ。

 鍵になったのは、ロックウッドという赤字続きの菓子材料メーカーへの投資である。

バフェットの逆転発想

 1954年、ロックウッドは大量のカカオ豆を抱えていた。同社は現金でカカオ豆を売る代わりに、株主に対し「一株を36ドル相当のカカオ豆と交換する」という提案を出したのだ。

 当時の市場の株価は34ドル。株を買ってカカオ豆と交換し、それを売れば一株2ドルの差益が出る。この価格差を利用した「裁定取引」で、彼の師のグレアムはコツコツ稼いでいた。

 だがバフェットは、あえて交換に応じなかった。他の株主が交換で抜けるほど、会社に残るカカオ豆を少ない株数で分け合えると気づいたからだ。彼は222株を買い集める。この大胆な発想が、後の大きな差を生んだ。

一株が持つ本当の価値

 バフェットが見ていたのは「株価」ではなく、「その一株が実際に何を所有しているか」だった。交換に応じず持ち続ければ、一株あたりのカカオ豆の取り分は、提示された36ドル分よりも増えていく。しかも、価値はカカオ豆だけではない。

カカオ豆だけではなく、利益が出ていることからこれからも存続する事業に関連する工場や機械、備品、現金、売掛金の価値も加わる。(『ウォーレン・バフェットはこうして最初の1億ドルを稼いだ』より)

 工場も機械も現金も、すべて株主のものだ。個人投資家も、目先の値動きではなく「この一株の中身は何か」を数える習慣を持てば、割安株の見え方は変わってくるだろう。

宝は地道さの先に眠る

 もっとも、こうした金脈は誰の前にも都合よく現れるわけではない。本書は、その現実をはっきりと突きつける。

こうした機会は日々、干し草の山の中から一本の針を探すような地道な作業を喜んでやる投資家に訪れる。バフェットはロックウッドのような金脈を一つでも二つでも多く探し当てたいと思いながら、数千社の企業を調査した。(『ウォーレン・バフェットはこうして最初の1億ドルを稼いだ』より)

 結果、株価は15ドルから約100ドルへと上がり、彼は1万3千ドルを手にした。派手な才能ではなく、人が面倒だと避ける調べものを続けた者にこそ機会は訪れる。

「楽して儲けたい」と願う人ほど、面倒な一手間を惜しんではいけない。遠回りに見えるその作業こそが、堅実な投資家への確かな一歩なのである。