「毎日片道1時間かけて満員電車に揺られ、帰宅する頃にはクタクタ」「出社回帰の動きで、またしんどい通勤生活が戻ってきた」……。そんな風に、日々の長時間の通勤にストレスを感じていませんか? 実は、長距離通勤がもたらす影響は、単に「本人が疲れる」という個人的な問題だけに留まりません。話題の書籍『働き方の科学』では、長距離通勤にまつわる「不都合な真実」を紹介しています。(構成/ダイヤモンド社・上村晃大)

Woman with backpack standing at metro platform with moving trainPhoto: Adobe Stock

長距離通勤がもたらす、もう一つの「罠」

 片道40分以上の長距離通勤をしている人は、そうでない人と比べて離婚するリスクが40%も高いという衝撃的な研究を、こちらの記事「通勤に片道40分以上かかる人」がしらずしらずに陥っている「家庭の罠」でご紹介しました。

 しかも、悪影響はそれだけではありません。話題の書籍『働き方の科学』によれば、長距離通勤はメンタルヘルスにも悪影響があることを明らかにした研究があるそうです。

往復1時間以上の通勤で「抑うつリスク」が16%上昇

 お隣の韓国は、日本と同じく通勤時間が長く、OECD諸国で最長水準です。ソウル大学校のホン・ユンチョル教授らは、韓国で約2万3400人を対象に行われた調査のデータを用いて、通勤時間と抑うつ症状の関係を分析しました(*1、2)。
 その結果、通勤に往復1時間以上かかる人は、30分未満の人と比べて抑うつのリスクが16%高いことが明らかになりました。

 なんと、抑うつのリスクがかなり高いことがわかりました。さらに、特にリスクが高い人の特徴も明らかにしています。

特に危険な「40代の未婚男性」と「20代の育児中女性」

 長距離通勤と抑うつリスクの関係は一様ではありません。男性の場合、40代で未婚、子どもがおらず、週52時間超の長時間労働者で、特に抑うつリスクが高い傾向にありました。中年の独身男性は孤独になりがちなのに加えて、長時間の通勤と労働によって家族や友人と交流できる時間が減り、抑うつリスクがさらに高まってしまうのかもしれません。
 また、女性の場合、20代で低所得、子どもを2人以上育てており、シフト勤務をしている人の抑うつリスクが特に高いことが示されました。長時間の通勤が、子育てをしている女性において仕事と家庭の両立を困難にし、メンタルヘルスに悪影響を与えている可能性があります。

 残業が多い40代未婚男性と、育児中のシフト勤務の20代女性は特に抑うつのリスクが高いという結果だったそうです。

 毎日の通勤にここまでの悪影響があるというのですから、この研究が「出社回帰」をめぐる議論に一石を投じるかもしれません。


*1 Lee, D.-W., Yun, J.-Y., Lee, N., & Hong, Y.-C. (2024). Association between commuting time and depressive symptoms in 5th Korean Working Conditions Survey. Journal of Transport & Health, 34, 101731. https://doi.org/10.1016/j.jth.2023.101731
*2 抑うつ症状は、「WHO-5」と呼ばれる質問票によって評価されています。回答者は、過去2週間について「楽しく、元気に過ごした」などの5項目に、0~5点の6段階で回答します。合計スコアは0~25点となり、13点未満の場合を抑うつ傾向があると定義しています。