「共働きなのに、なぜか夫に比べて自分の給料が低い」「学歴も能力も差がないはずなのに、男女間の賃金格差が縮まらないのはなぜだろう」――。ジェンダー平等が叫ばれて久しい現代においても、男女間の格差は依然として存在します。なぜ、女性の社会進出や高学歴化が進んだ現代でも、この格差は残り続けているのでしょうか。実は、その裏には「時間を無視した働き方」を高く評価する、職場の評価構造の問題がありました。話題の書籍『働き方の科学』より、男女間の賃金格差が残り続けるシビアな真実を紹介します。(構成/ダイヤモンド社・上村晃大)

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学歴や能力に差がなくなっても、格差が残る理由

 ジェンダー平等を実現する上で、男女間の賃金格差を是正することは極めて重要だと考えられています。

 しかし、育児休業や時短勤務などの両立支援制度が整いつつある現代でも、男女間の所得の差は簡単には埋まりません。

 話題の書籍『働き方の科学』では、男女間の賃金格差が残り続けている理由を示唆した研究を紹介しています。

 2023年にノーベル経済学賞を受賞したハーバード大学のクラウディア・ゴールディン教授は、「男女間の賃金格差はなぜ残り続けているのか?」という問いに、明確な答えを与えました(*1)。
 以前は、男性に比べて女性のほうが教育年数は短く、それが男女間の賃金格差につながっていると考えられてきました。現在、女性の教育年数は男性と違いなく、大学での専攻もキャリア志向の分野へと変化しました。その結果、男女間の賃金格差は大幅に縮小しました。それでもなお、男女間の賃金格差は残り続けています。なぜなのでしょうか?
 ゴールディン教授の答えは、仕事における「時間の柔軟性」が不十分だからというものです。つまり、男女間の賃金格差は、教育年数の違いだけでは説明できず、

・長時間労働できる
・突然の呼び出しに応じられる
・夜間や週末にも対応できる

といった「時間を無視した働き方」に高い報酬が与えられていることで生じている
のです。

女性が「時間を無視した働き方」を選べない背景

 つまり、家事育児などでの家庭内の対応が女性に偏りがちなために、女性は時間の柔軟性を必要としているけれども、そのために「時間を無視した働き方」をするのが難しいということです。長時間働ける人ほど高く評価される仕組みが多くの職場で残っているため、なおさらでしょう。

 この男女間の賃金格差を解消するために、私たちに何ができるのでしょうか。『働き方の科学』ではこう述べています。

 男女間の賃金格差の原因は、柔軟性の低い職場構造です。そしてこれは、制度設計次第で変えられるとゴールディン教授は指摘しています。具体的には、

・業務を分担できる仕組み
・ITを活用した情報共有と引継ぎの標準化
・顧客や案件を個人ではなくチームでもつ設計

などを導入することで、家庭で急な対応が必要となったときに、他の人に仕事を代わってもらいやすくなります

 こうした取組は、女性のためだけに行うものではありません。柔軟な働き方を求めるすべての労働者にとって恩恵がある仕組みです。柔軟な働き方ができる環境を整備することで、優秀な人材が集まる可能性が高まります。人手不足の中で、経営者にとってもメリットがある話なのです。

 柔軟性の高い職場にすることで、男女間の賃金格差を是正するだけでなく、柔軟な働き方を求めて優秀な人材が集まるのであれば、経営者にとっても合理的と言えそうです。


*1 Goldin, C. (2014). A grand gender convergence: Its last chapter. American Economic Review, 104(4), 1091-1119. https://doi.org/10.1257/aer.104.4.1091