正義マン、うざっ!「プライドが高い人」の典型的な特徴【マンガ】『マネーの拳』(c)三田紀房/コルク

三田紀房の起業マンガ『マネーの拳』を題材に、ダイヤモンド・オンライン編集委員の岩本有平が起業や経営を解説する連載「マネーの拳で学ぶ起業経営リアル塾」。第76回では、企業とファンドの「理屈の違い」について解説する。

外資系ファンドの日本代表が投資先社長を「断頭台に送る」と言ったワケ

 外資系ファンド・サンデーキャピタルによる株式の買い占めで混乱する、新興上場アパレルメーカー・T-BOX。T-BOXの創業社長・花岡拳は、面会を求めてきたサンデーキャピタルの福沢ウイリアム太郎と対峙し、福沢に「ハゲタカども」「卑しい餓鬼(がき)そのもの」とまで、徹底的に批判する。

 これに激高した福沢は、臨時株主総会を開催し、社長である花岡の解任要求をすると啖呵(たんか)を切る。

 だが花岡はそれを鼻で笑い、そもそも株主総会を招集できるのが、3%以上の株式を6カ月前から保有する株主のみだと指摘。直近に株を買い占めたサンデーキャピタルにはその権限がないと反論する。

 プライドの高い福沢は「3%以上6か月前…もし、それをすでに有しているとしたら…?」「あなたに息つくヒマも与えずに、断頭台へ送って差し上げましょう!」と花岡を挑発。「投資家こそが唯一の善。正義は常に我々にあるのです」と豪語し、面会の席を立つのだった。

ファンドにとって、企業経営者は「恩知らず」なのか

漫画マネーの拳 9巻P97『マネーの拳』(c)三田紀房/コルク

 事業拡大のために投資資金を募っておいて、人でなしとののしるのか――福沢は去り際に、花岡だけでなく、企業経営者そのものを「恩知らず」だと批判する。

 もちろん投資家は起業家や企業の恩人ではない。その企業の成長によるリターンを期待し、リスクを取って資金を出すビジネスだ。だからこそ、企業経営者も、集めた資本をどう使って企業価値を高めるのか、株主に説明する責任がある。

 そういう意味では、これまで投資家から資金を調達することで上場した花岡が、たとえ望まないかたちでサンデーキャピタルに株式を持たれたとしても、筋違いな態度を取っている。福沢はそう憤慨したわけだ。

 企業側の理屈とファンドをはじめとする株主の理屈は、時に相反することがある。アクティビストファンドなどの存在感が増す今、日本企業にも強く突きつけられている課題と言える。

 たとえば英投資ファンドのパリサー・キャピタルは2023年、京成電鉄に対して同社が保有するオリエンタルランド株の一部を売却し、成長投資や株主還元などに資本を有効活用するよう要求した。

 京成側は、オリエンタルランドとの関係は将来の事業機会にもつながる重要な資産だとして反対。「会社に残すべき資本か、別の用途に回すべき資本か」を巡り対立した。

 日本企業は長らく内部留保こそを安定経営の証しとしてきた。だが現在では、ともすれば「使い道のない資本を抱えるだけ」として批判の的にもなりえる。経営者は会社の所有者ではなく、株主から託された資本を運用する立場でもある。

 福沢の言い分も花岡に負けず劣らず乱暴なところがある。だが、成長後の企業がその「果実」を誰に、どう配分するのか――そんな問いから経営者が逃れられないことを示す、上場企業のリアルだとも言える。

 証券アドバイザーとしてT-BOXを支援する牧信一郎は、花岡にサンデーキャピタルへの対抗策を提案する。だがその頃、サンデーキャピタルに出資し、陰から操る一ツ橋商事の井川泰子は、T-BOXの幹部・大林隆二をあらためて仲間に引き入れようと、大胆な提案を行うのだった。

漫画マネーの拳 9巻P98『マネーの拳』(c)三田紀房/コルク
漫画マネーの拳 9巻P99『マネーの拳』(c)三田紀房/コルク