買い物やレストランでメニューを選ぶとき。つい「有名なブランドだから」「値段が高いから間違いないだろう」という表面的な理由だけで選んでしまっていないだろうか。実は、物を選ぶセンスがない人には明確な共通点がある。ワイン専門家である水上彩の著書『15か国・地域を飲んで旅する ワインの世界地図』の中から、表面的な価値にとらわれず、本質的なセンスを磨いて日々の体験を豊かにするための視点について紹介する。(構成/ダイヤモンド社書籍編集局)
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目に見える「表面」しか評価できない
世の中には、高いお金を払って買い物をしてもどこか野暮ったい人と、手頃な値段の物を選んでも洗練されて見える人がいる。
その決定的な違いは、「目に見えない背景」を想像できるかどうかにある。
物を選ぶセンスがない人の特徴は、値段やブランド名、パッと見のデザインといった「表面的な結果」しか見ようとしないことだ。
ワインコラムニストの水上彩氏も、著書『ワインの世界地図』の中で、一杯のグラスから広がる豊かな世界について次のように述べている。
氷山をイメージしてみてください。水面上に見えている一角がグラスの中身(結果)だとすれば、水面下には広大な氷山(背景)が隠れています。
――『15か国・地域を飲んで旅する ワインの世界地図』より
センスのない人は、水面から出ている氷山の一角だけを見て、すべてをわかった気になってしまうのだ。
背景を知ることで楽しみは「爆上がり」する
一方で、物を選ぶセンスがある人は、常に「目に見えない要素」への知的好奇心を持っている。
同著者の水上氏は、その背景を知ろうとする姿勢が、体験そのものの価値を大きく引き上げると語る。
ただ、氷山がどれくらいの深さなのか、どんな形をしているのか。目に見えない要素を知ろうとすると、もっとずっと面白くなります。
これは芸術鑑賞にも似ているかもしれません。絵を見て「綺麗だな」と直感で楽しむ人もいれば、時代背景や作家の人生を知って深く味わう人もいる。
どちらが良い悪いではなく、両方の見方ができると、楽しみ方は爆上がりすると思うのです。
――『15か国・地域を飲んで旅する ワインの世界地図』より
美しいデザインや美味しい味を楽しむだけでなく、「なぜこれが生まれたのか」「どんな人が造ったのか」という背景にまで思いを馳せる。
その多角的な視点こそが、物を選ぶセンスの正体なのだ。
お金ではなく「自分のストーリー」と共鳴させる
さらに水上氏は、物選びにおける最も重要な「第三の軸」について触れている。
個人的なストーリー(ワインとの関係性)です。
一杯のワインには、それぞれ物語――どんなワインを届けたいかという造り手の哲学やストーリーがあります。
世の中にある無数のワインから飲みたいワインを選ぶとき、そこにあるのは、自らの人生との共鳴。
よく、ワインは「お金がないと楽しめない」と誤解されがちです。ですが、何十万円もする高級ワインが買えなくても、手の届く価格のワインを「これ、いいじゃん!」と全力で面白がることはできます。
そのためには、知的好奇心と思い入れが最強の武器になります。
――『15か国・地域を飲んで旅する ワインの世界地図』より
物を選ぶセンスとは、決してお金をかけることではない。
造り手の哲学を知り、自分の人生や価値観と共鳴するものを面白がりながら選び取る力のことだ。
「高いから」「有名だから」という他人の基準を手放し、目の前にある物の「見えない氷山」に目を向けることで、あなたの選ぶ物はきっと、より深く豊かなストーリーを帯びてくるはずだ。
ワインジャーナリスト/コラムニスト
1986年生まれ、神奈川県鎌倉市育ち。お茶の水女子大学理学部卒業後、大手通信企業を経てワイン業界へ。世界最大のワイン教育機関WSETが認定する、国内でも取得者の少ない最難関資格「Level 4 Diploma」を保持。
『Forbes JAPAN』オフィシャルコラムニストとして、ワインをビジネスや文化の視点から紐解く一方、国内外の産地を精力的に訪問し、ストーリーを丁寧に紡ぐ執筆活動を展開。スーパーで手に入るデイリーワインからハレの日の1本まで等しく愛し、初心者目線の解説に定評がある。また、茶道や着物を日常に取り入れたライフスタイルを実践し、ワインと日本の美意識を交差させた独自の楽しみ方を発信している。趣味はアルゼンチンタンゴ。








