「自分磨きのために新しいことを始めたい」。そう思って色々な趣味に手を出してはみたものの、長続きせずに途中で挫折してしまった経験はないだろうか。真面目な人ほど知識の詰め込みに疲れてしまい、せっかくの興味を失ってしまう。実は、大人の趣味が続かない人には明確な共通点があるのだ。ワイン専門家である水上彩の著書『15か国・地域を飲んで旅する ワインの世界地図』の中から、趣味を「一生モノの教養」へと変え、長く深く楽しむための視点について紹介する。(構成/ダイヤモンド社書籍編集局)

あきれるほど「趣味が長続きしない人」の共通点・ワースト1Photo: Adobe Stock

「暗記」から入るから挫折する

 何か新しい趣味や習い事を始めようとした時、入門書を買って専門用語を暗記しようとしたり、マニュアル通りに覚えようとして疲れてしまった経験はないだろうか。

 趣味が長続きしない人の共通点、それは「知識の丸暗記」から入ろうとしてしまうことだ。

 ワインについて文章を書く仕事をしている水上彩氏も、著書『ワインの世界地図』の中で、大人が純粋に楽しむためには「受験勉強のような暗記」は不要だと述べている。

「ワインはお好きですか?」と尋ねると、かなり多くの人が、少し後ろめたそうに、こう答えます。
「たまに飲みますが、ぜんぜん詳しくなくて……」
銘柄を見てもピンとこない。レストランのワインリストは呪文のよう。もう少し知識があればもっと楽しめるのに――そんな風にもどかしく思っている人は多いのではないでしょうか。
実は私も、かつて「詳しくなりたい」一心で、ずいぶん遠回りをしてしまった一人です。
皆さんは、「ワインに詳しい」というと、何をイメージしますか?
ボルドーの格付けシャトーを暗記したり、イタリアの複雑な規定やぶどうの品種の割合を%単位で覚えたり……。こうした受験勉強のような知識はプロには必要かもしれません。
しかし、「大人が純粋にワインを楽しむためには必須ではない」と、今の私なら断言できます。

――『15か国・地域を飲んで旅する ワインの世界地図』より

 真面目な人ほど、「詳しくならなければ楽しんではいけない」と思い込み、高いハードルを設定してしまう。

 しかし、知識の詰め込みを目的とした瞬間から、せっかくの楽しい趣味は「苦痛な作業」に変わってしまうのだ。

「自分探し」で体験をはしごする日々

 また、趣味が続かない理由のもう一つに、「表層的な体験だけで終わってしまう」ことが挙げられる。

 著者自身も、かつては自分に自信が持てず、色々なものに手を出しては続かない「趣味迷子」だったという。

社会人2年目の当時、とにかく自分に自信がなかった私は、自分磨きに必死でした。
ゴルフ、ヨガ、カメラ、美術……何か「推し」を見つけたくて体験レッスンをはしごする毎日。
そんな中、たまたま参加したのが、表参道にあった「カルディコーヒーファーム」で開催していたワンコイン(500円)セミナーでした。
当時のメモを読み返すと、「なんか変わった匂いがして、余韻が長い気がした」と綴られています……。我ながら恥ずかしくなるような感想です(汗)。
味も香りもまったくわかりませんでしたが、プロが語るワインのお話に、知的な興奮を覚えたことだけは鮮明に記憶しています。
――『15か国・地域を飲んで旅する ワインの世界地図』より

 ただなんとなく体験レッスンに通うだけでは、長続きはしない。

 著者がワインの世界に深くのめり込んだのは、単なる味覚の体験を超えて、その背景にある物語に「知的な興奮」を覚えたからだった。

点と点をつなげて「教養」に変える

 では、興味を持ったことを挫折せずに楽しみ続けるためには、どうすればいいのだろうか。

 著者は、暗記ではなく「全体像を把握し、現実世界と接続すること」の重要性を説いている。

重要なのは、まずワインの「世界地図」を頭に入れること。そして、現実世界とワインの地図をマッピング(接続)することです。
ワインは、地理・歴史・政治・経済・文化などが樹の根のように絡まり合った飲み物。いわば液体でできた地政学です。わかりにくくて当然なのです。
本書が提供するのは、沼のように深いワインの世界を迷わず歩くための視点です。
この羅針盤があれば、バラバラだった点と点がつながり、ワインの「情報」が、自らの血肉となる「教養」に変わります。もちろん、暗記は一切不要です。
――『15か国・地域を飲んで旅する ワインの世界地図』より

「趣味が長続きしない人」の共通点とは、物事を単なる情報として丸暗記しようとしたり、表面的な体験だけで満足してしまうことだ。

 一つひとつの知識を暗記するのではなく、全体の地図を捉え、歴史や文化といった背景のストーリーとつなぎ合わせていく。

 そうやって好奇心の点と点をつなげていく視点を持てた時、その趣味はきっと、あなたの人生を豊かにする一生モノの「教養」へと変わっていくはずだ。

水上 彩(みずかみ・あや)

ワインジャーナリスト/コラムニスト
1986年生まれ、神奈川県鎌倉市育ち。お茶の水女子大学理学部卒業後、大手通信企業を経てワイン業界へ。世界最大のワイン教育機関WSETが認定する、国内でも取得者の少ない最難関資格「Level 4 Diploma」を保持。
『Forbes JAPAN』オフィシャルコラムニストとして、ワインをビジネスや文化の視点から紐解く一方、国内外の産地を精力的に訪問し、ストーリーを丁寧に紡ぐ執筆活動を展開。スーパーで手に入るデイリーワインからハレの日の1本まで等しく愛し、初心者目線の解説に定評がある。また、茶道や着物を日常に取り入れたライフスタイルを実践し、ワインと日本の美意識を交差させた独自の楽しみ方を発信している。趣味はアルゼンチンタンゴ。