この様子をFBIは鞄や靴に仕込んだ超小型カメラで撮影していた。アンナを含むロシアのスパイ10人が逮捕されたことで、このスパイ戦はハイテクのアメリカが勝利した(後にロシアが逮捕したアメリカ人スパイと交換するかたちで、アンナらは釈放される)。

 日本の公安がハニートラップを仕掛けることはない一方で、仕掛けられることはある。中国やロシアなどの国々からで、公安捜査員だけでなく、キャリア官僚や大企業の幹部なども標的にされる。

ターゲットが思いを寄せる女性を
後から協力者に仕立て上げる

 ところで、ハニートラップというと「訓練されたプロフェッショナルな女性」というイメージがあるかもしれないが、それは間違い。かつてはそういうこともあったが、現在は、わざわざ専門のハニートラップ要員を育てるようなことはまずしない。

 では、どうしているのかというと、「後づけ」。

 対象者が好意を寄せている、あるいは気になっている女性を把握し、彼女に金銭を渡すなどして「後から協力者に仕立て上げる」という手法だ。

 少々荒っぽい気もするが、これが結構な成果を上げている。しかもゼロからプロの要員を育てるよりもはるかに楽、かつ安上がりなので、理にかなった方法といえるだろう。

 たとえば中国の場合も、ターゲットがたまたま気に入った女性を、後から金銭を渡すなどして協力者に仕立てる手口が多いようだ。

「仲間由紀恵がタイプ」と
言ったら現れた謎の女性

 外務省のある若いキャリア外交官(将来の大使候補)が、中国人の経営するバーに行った時のこと。バーのオーナーに好きな女性のタイプを聞かれた彼は、即座に仲間由紀恵と答えた。

 すると後日、「仲間由紀恵」が至るところに現れた。自宅近くのコンビニ内で肩が触れ、外国語訛りで「ごめんなさい」と謝ってきた「仲間由紀恵」、行きつけのバーや居酒屋でたまたま隣に座った「仲間由紀恵」、帰宅時に外務省から出たところで出くわした「仲間由紀恵」、電車の中で目が合った「仲間由紀恵」……。みな同一人物だった。