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日本政府は外国企業による対日投資の規制を強化する方向だ。外為法改正により米国に倣った「対日外国投資委員会(日本版CFIUS)」を設け、安全保障に絡む重要技術の流出を防ぐ。一方、日本政府は4月下旬にアジア系投資ファンドのMBKパートナーズに対し、工作機械大手の牧野フライス製作所の買収に対して中止を勧告し、MBKは買収を断念した。対日投資の審査厳格化の動きが加速するが、経済安全保障の第一人者でEYストラテジー・アンド・コンサルティングの國分俊史CESO(チーフ・エコノミック・セキュリティ・オフィサー)は、日本版CFIUSは「今のままではつくるだけ無駄」と断ずる。國分氏に政府の対日投資規制策の課題や、経済安保リスクを低減するための施策を語ってもらった。(聞き手/ダイヤモンド編集部 今枝翔太郎)
CFIUSも使う中国リスクの分析ツール
米国では中国系企業に資産売却命令も
――経済安全保障リスクの高まりを受け、日本政府は外為法の改正や国家情報局の創設といった施策を推し進めています。日本政府の対日投資規制の強化の動きをどう見ていますか。
われわれが利用している経済安全保障リスクの分析ツールに「ワイヤースクリーン」というものがあります。中国の企業間取引、役員や実質的支配者の可視化に強みを持っています。ワイヤースクリーンは対米外国投資委員会(CFIUS)も利用していて、日本でこれを使用する権利があるのは、当社とごく一部の企業だけです。実は、日本政府は使っていません。日本のインテリジェンス不足を示す例といえるのではないでしょうか。
――米国のCFIUSは、ワイヤースクリーンをどのように活用しているのでしょうか。
バイデン政権時代に、中国系のマインワン社に土地の売却命令が出た事例を紹介しましょう。米国内の空軍基地の近隣に、マインワンが運営する暗号通貨の施設がありました。施設の中にあった暗号通貨のサーバーが、スパイ行為に使われかねないという理由で、この企業に対して、土地ごとそこを売れという命令が出たのです。
この施設で使われていた設備を作っている会社をワイヤースクリーンで調べると、役員が他の会社の役員を兼任していることが分かります。兼務先の一つの中国企業が、中国人民解放軍に対して物品を納入していたのです。
日本製鉄によるUSスチール買収の際にも、CFIUSは同様に徹底的に調べ上げたことでしょう。
――日本政府も、外為法改正による日本版CFIUSの設立を目指すなど外国企業による対日投資規制の法整備を急ピッチに進めています。
今のままでは、日本版CFIUSのみならず、与党で議論が進んでいるスパイ防止法や日本版CIA(中央情報局)ともされる対外情報庁もつくるだけ無駄です。
次ページでは、國分氏が日本の経済安保政策の問題点を鋭く指摘。現在の経済安保政策は「箱物化」に陥っていると批判する。米中のはざまで経済安保リスクが高まる中で、日本の弱点でもあるインテリジェンス不足を補う「お金のかからない経済安保」とは――。







