FBI捜査官すらオトす中国のハニートラップ、日本人が狙われる「危険な店」とは?写真はイメージです Photo:PIXTA

中国の古典でも扱われるほど古くから存在している「ハニートラップ」。密室に1対1でいたら、人は相手に対する警戒心が緩み、情欲に溺れやすくなるのだろうか。世間を騒がせた数々のハニートラップについて紹介する。本稿は、上田篤盛・稲村 悠『カウンターインテリジェンス 防諜論』(育鵬社)の一部を抜粋・編集したものです。

中国兵法書にもある「ハニートラップ」
国家主導で仕掛けられる毒牙の恐怖

 中国による諜報・工作活動の手法でしばしば取り沙汰されるのが、「ハニートラップ」(甘い罠)だ。

 元々、旧ソ連の国家保安委員会(KGB)の得意とする工作活動であり、高級売春婦などを使ってターゲットを陥れ、情欲を発端に脅迫や懐柔によって協力者として獲得するものである。

 中国情報機関もKGBに負けず劣らずこの方法を駆使している。そもそも、中国兵法書『六韜』には「厚く珠玉を賂い、娯ましむるに美人を以ってす」「美女喚声を進めて、以ってこれを惑わす」とある。

『兵法三十六計』にも「美女の計」がある。中国の古典では、女性の誘惑により政権が崩壊に至ったことがしばしば描かれている。つまり、ハニートラップは中国の伝統的な常套手段なのである。

 2003年、最大級のハニートラップ事件が発生した。カトリーナ・レオン(中国名・陳文英)という中国系米国人女性が、中国の国家安全部の指令の下で、FBI捜査官2人と性的関係を結んで米側の機密情報を窃取し、それを中国に流していたのである。

 レオンが注目されるようになったのは、1997年11月の江沢民国家主席(当時)の初訪米時である。江は、ロサンゼルスの中国系米国人コミュニティの年次晩餐会に主賓として招待された。

 その時、レオンは通訳と司会進行役を務めた。その後、ロサンゼルスの中国系米国人社会で名声を博するようになった(デイヴィッド・ワイズ著『中国スパイ秘録米中情報戦の真実』)。

 この件は、中国情報機関の国家安全部が、背後でレオンに対して中国要人との人脈形成を支援していたことを物語っている。

中国のカラオケ店で狙われる日本人
日本でも「会員制ラウンジ」で工作

 日本においても2004年に、当時の在上海日本総領事館員が、関係のあった中国人女性を巡り中国公安によって諜報活動への協力を強要され、「国を売ることはできない」と遺書を残して自殺した痛ましい事件が発生している。