領事は良心の呵責を感じながらも彼らの求めに応じていたのだが、ある時、ロシア・サハリン州のユジノサハリンスク総領事館への異動が決まった。
怒ったエージェントは領事に対し、「今後も協力をし続けないと、これまでのことをお前の国や家族に全部バラしてやる」と脅した。進退窮まった領事は、総領事館の中で縊死したのだった。総領事に宛てた遺書には「日本を売らない限り、私は出国できそうにありません」とあったという。2004年の話だが、決して過去の話と片づけるべきではない。
現に今も上海のカラオケクラブはハニートラップの巣窟になっていて、最近も日本の企業に勤める私の知人が、クラブの女性と深い関係になり、機密情報を知りたいと持ち掛けられたばかりだ。上海のカラオケクラブに行く機会があったとしても、絶対に個室に入ってはいけない。
某国大使館主催のパーティーでは
美しい女性からの誘いに要注意
『警視庁公安部外事課 スパイ・テロを水面下で阻止する組織の実態』(勝丸円覚、光文社)
ハニートラップが盛んな某国大使館主催のパーティーでは、必ずと言っていいほど美しい女性がたくさんいる。
公安の中でも外事課に勤務していると、こういう場に顔を出すことがある。男性の同行者には、あらかじめ「美人がたくさん寄ってくると思うけど、気をつけてくださいね」と釘をさしておく。にもかかわらず、アルコールが入った状態で、美しい女性が近づいてくると、たちまち腰砕けになってしまう。
後日、その美人から同行者に連絡がくるのだが、誘いに乗るのは絶対危険。鼻の下を伸ばしている彼に対して、「わかっているとは思いますが、会うのは危険ですよ。ましてや、のこのこホテルまで行かないように」と強く念を押す。
こうしたことを何度も続けてくると、仕事以外のパーティーやレセプションなどの場で女性と知り合っても、まずその場のあいさつで終わってしまう。公安の悲しい性で、身構えてしまうからだ。女性が身構えるのは普通だけど、男の側が過剰に警戒すると、相手の女性に引かれてしまう。なので、最初からこういう場で、女性と仲よくなる可能性は捨てて、自然にふるまうようにしている。







