
サムスングループの技術者の中国流出が止まらない。韓国政府は産業スパイを厳しく取り締まるが、先端技術はすでに中国が掌握した。なぜ韓国人技術者は中国へ渡るのか。特集『サムスン 復活・衰退の分岐点』(全6回)の#3では、「中韓産業スパイ攻防戦」の最前線に迫る。(産業タイムズソウル支局長 厳在漢〈オム・ジェハン〉、ダイヤモンド編集部 猪股修平)
中国への技術流出が数年で倍増!
元サムスン電子技術者の逮捕も相次ぐ
1980~2000年代にかけて、サムスン電子をはじめとした韓国電機メーカーは日本人技術者の確保に力を注いだ。サムスングループ企業の元役員によると「2000年代には300人以上の日本人技術者がサムスングループの研究施設にいた」という。サムスングループにヘッドハンティングされた日本人技術者は「(研究職の)全体の1割を日本人にする計画もあったようだ」と明かす。
この技術者によると、サムスングループのヘッドハンティングには成功の方程式があったという。まず、ある技術に長けた研究者を特定する。そして、サムスングループ側が業務委託しているヘッドハンターやサムスングループの人事関係者が接触する。面接時には日本メーカーの1.5倍以上の報酬を提示し、研究所を見学させたり、高級料亭などで接待したりして勧誘する。そうして、2、3カ月ほどでサムスンに転身させたという。
「さらに、移籍してきた研究者に『良い人材はいないか』と聞き込み、また新たな人材にアプローチしていく。サムスングループは研究者の口コミも頼りに、日本の人材を増やしていたようだ」(前出の技術者)
しかし10年代後半になると、今度は中国企業が隆盛する。サムスングループの技術者が、逆にヘッドハンティングの対象になったのだ。国家の屋台骨を支える半導体産業の技術流出は、韓国に深刻なダメージを与えている。
次ページでは中国企業による韓国人技術者の引き抜きの実態や、技術流出の片棒を担ぎ刑事罰を受けた技術者の末路、さらには、韓国政府の技術流出防止策を明らかにする。