現在は電力網からの電力供給を受けている「コロッサス1」現在は電力網からの電力供給を受けている「コロッサス1」
PHOTO: KEVIN WURM FOR WSJ

 米電気自動車(EV)大手 テスラ を通じてEVを主流にするというイーロン・マスク氏のビジョンは、同氏を世界一の富豪に押し上げる一因となった。

 そのマスク氏が今、化石燃料依存へと方向転換している。

 同氏が率いる宇宙企業 スペースX は先週、テキサス州グライムズ郡に天然ガス発電所を建設する計画を発表した。そこでは同社が新たに巨大な半導体製造施設を建設中だ。

 テネシー州とミシシッピ州にある他の施設では、マスク氏はデータセンターへの電力供給を数十基のガスタービンに頼っている(同氏は自身の 事業計画の中核 である人工知能=AIの訓練にデータセンターが必要との見方を示す)。さらに今年に入り、同氏が個人的な投資としてガスタービンメーカーの買収まで行ったことが、規制当局への開示資料で明らかになっている。

 こうしたインフラ整備とマスク氏の方針転換を促しているのは、次世代AIの開発に向けたスペースXの膨大な燃料・電力需要だ。今春時点で既に、米国内の電力網の外で生み出されていたデータセンター向け電力2ギガワット(GW)の4分の3を、同社のデータセンター向けが占めていた。

 8月4日の投資家向け説明会でマスク氏は、同社の発電容量が2027年末までに10GW前後まで拡大する可能性があり、15GWに達する可能性さえあると語った。それが実現すれば、スペースXは米最大のデータセンター運営企業となる。データセンターのプロジェクトを追跡するデータ企業クリーンビューによると、現在トップの アマゾン・ドット・コム の発電容量は約13GWだ。

 マスク氏は財産の大半を、化石燃料に取って代わることを目的とする技術、すなわちEV・電池・太陽電池によって築いた。同氏は10年前、化石燃料の燃焼を「歴史上最も愚かな実験」と呼び、それらの燃料はいずれ枯渇すると警告していた。当時、テスラは企業理念として、「世界の持続可能なエネルギーへの移行を加速する」ことを掲げていた。

 しかし、ここ数年でマスク氏の見方は変わった。政治的に右寄りになり、ドナルド・トランプ米大統領や共和党に何億ドルも献金する一方で、テスラの企業理念から「持続可能な」という文言を削除した。

 マスク氏の支持者の一部は、スペースXの最近の投資によって長期的にエネルギー消費を減らせると主張する。同社は宇宙に、太陽光エネルギーを電源とするデータセンターを設置することを目指している。天然ガスの活用によって同社は迅速に事業を進めることができ、それが成功すれば地上インフラへの依存を減らすことにもつながる。

 マスク氏は11日に行われた社内の全体会議で、「AIの訓練は引き続き地上で行われるだろうが、AIの推論やAIの日常的な利用は宇宙で行われるようになると思う」と語った。会議の模様は同氏率いるX(旧ツイッター)で配信された。

 スペースXはこれらの軌道上データセンターへの電力供給を支援するため、テキサス州バストロップに新たな太陽電池工場を建設する計画だと明らかにした。