「これまでの自分のやり方が正解だ」と過去の経験則にすがりつくことが、組織の足かせとなり、自分自身を退化させていく原因になります。人間は放っておくとラクな現状維持を選び、新しいシステムから目を背けようとする行動原理を持っています。この本質を見抜けないリーダーは、やがて時代の変化に取り残されていくでしょう。この連載では、書籍『リーダーの仮面』をベースに、全ビジネスパーソンに必須の「リーダーシップ」のあり方を指南する。(構成/ダイヤモンド社・種岡 健)

「つまらない老後」まっしぐらの50代管理職ができてないことPhoto:: Adobe Stock

過去に固執するベテラン

 50代の管理職に差し掛かると、過去の成功体験が肥大化し、会社が提示する新しいマニュアルやルールを「現場を分かっていない」「若手のやることだ」と見下す人が増えてきます。

「マニュアル通りに動くなんて、ロボットのようでつまらない」
「自分の長年の勘のほうが、正しく顧客を動かせる」

 そう主張して自己流のやり方を崩そうとしないベテランは、一見すると信念のある実力者に見えますが、本質は違います。

 単に、新しいルールを覚えて従うという負荷から逃げているだけにすぎません

 マニュアルを軽視し、型を無視して作られる料理が誰の口にも合わないのと同様に、自己流を押し通すリーダーは組織の生産性を著しく阻害しています。

「基本」を忠実に守る者

とにかく仕組み化』という本で私は、マニュアルの本当の価値を次のように解説しています。

いまの時代、「マニュアル」が軽視されています。
書いてある通りにやることはバカにされがちです。
しかし、マニュアルは、過去の苦労の結晶です。
世の中にあるレシピや法則は、過去の膨大な失敗を経て、残っています。
もちろん、それを見直すことは重要です。
しかし、最初からすべてを疑い、マニュアルを軽視してしまっているのが、いまのトレンドではないでしょうか。
いったん、その通りに、忠実になろうとするほうが、じつは成長は早いのです。
――『とにかく仕組み化』より

 マニュアルやレシピは、先人たちが流した血と汗、そして膨大な失敗から編み出された「最も効率の良い最適解」です。

 この基本の型を忠実に守り、完全に習得した先にしか、本当の個性や改善は生まれません

 基本すらまともに守らない人間が語る「自分らしさ」など、ただのサボりの言い訳にすぎないのです。

謙虚に「型」へ回帰せよ

 50代になっても会社や市場から求められ続ける人は、過去のプライドを捨て、常に新しいマニュアルや組織の仕組みに「忠実に従う」という素直さを持っています。

 逆に、自己流のこだわりを押し通したベテランは、若手から煙たがられるだけの「老害」と化し、退職後は誰も相手にしてくれないつまらない余生を過ごすことになります。

 リーダーは感情を排し、自ら進んでマニュアルの模範となる仮面をかぶりましょう

 ルールの遵守こそが最大の効率を生み、チーム全体のスピードを底上げする。
 その厳格な背中を示すことこそが、部下を真のプロフェッショナルへ導くのです。