感受性をフルに使い、自分というフィルターを通して捉えた実感を、そのまま伝え方に反映させます。その場で相手と向き合い、自らの感性で捉えた実感を、嘘偽りのない自分の言葉として表現する。隙のない完璧なロジックよりも、手触り感のある自分の内側から自然と湧き出た言葉こそが、相手の心に深く届く「牙」となるのです。
私が今、できるだけ人に会い、会場に足を運ぶリアルコミュニケーションを大事にしているのも、この「身体性」の可能性を大いに感じているからです。
AIは「誠実さが大事です」という文章をつくることはできても、実際に相手の目を見て、その瞬間の空気に共鳴しながら、確信を持って言葉を発することはできません。
情報の伝達に留まらず、あなた自身の感受性を解放し、意志を届けること。まさに生身の人間同士だからできる「LIVE」のコミュニケーション。これこそが、AI時代において、目の前の誰かを動かす伝え方の本質なのだと私は確信しています。
役職に頼らなくとも
「影響力」は持てる
ここで皆さんに、強くお伝えしたいことがあります。
多くの人は「自分には役職(ポジション)がないから、人を動かすなんて無理だ」と諦めてしまいます。
しかし、決してそんなことはないのです。私はグロービス経営大学院でリーダーシップにおける「影響力」をテーマに講義をしています。その内容の詳細はここでは割愛しますが、グロービスが提唱している人を動かす力(パワー)には、大きく分けて3つの源泉があります。
GLOBIS学び放題×知見録(※)によれば、パワーは次の3つに分類されます。
・公式の力(ポジションや権限)
役職や肩書に伴う権限です。「部長だから言うことを聞け」という、いわば「水戸黄門の印籠」のような力です。組織を運営する上では有効ですが、これはあくまで「外付け」の力であり、これだけで相手の心に火をつけることはできません。
・個人の力(専門性やカリスマ性)
その人自身の魅力、専門スキル、積み上げてきた実績、そして「この人の言葉なら信じられる」と思わせる人間力などです。
『語りの牙 論理と感情をつなぎ、確実に刺す全技術』(伊藤羊一、朝日新聞出版)
・関係性の力(人脈やネットワーク)
「あの人が困っているなら一肌脱ごう」と思われる、人とのつながりや信頼の蓄積です。横のネットワークの強さと言い換えてもいいでしょう。
勘の良い方はピンと来たはずです。3つのパワーのうち、個人の力と関係性の力の2つは、今のあなたがどんな立場であっても、今日、この瞬間から磨き始めることができるものなのです。
むしろ、この2つのパワーを地道に育ててきた結果として、後から公式の力(ポジションや権限)がついてくるのが、これからの時代のキャリアのあり方といってもいいでしょう。
「牙」を研ぐとは、単に言葉を鋭くすることではありません。圧倒的な行動によって、「個人としての魅力」と「関係構築力」の総量を増やしていくことなのです。







