9月末に閉店する西武渋谷店9月末に閉店する西武渋谷店(東京商工リサーチ撮影)

百貨店が急速に姿を消している。この夏、髙島屋洛西店(京都府、8月3日)、東武百貨店大田原店(栃木県、8月31日)が相次いで営業を終了する。さらに、9月末には若者で賑わう東京・渋谷で唯一の百貨店だった西武渋谷店も閉店する。コロナ禍後、インバウンド需要で回復の兆しが見られた百貨店だったが、恩恵を受けたのは都心部の一部百貨店に限られた。追い風になるはずの物価上昇でも売り上げが落ち込み、主要百貨店の8割が直近決算で「減収減益」と、厳しい現実を突きつけられている。(東京商工リサーチ情報部 増田和史)

シブヤから百貨店が消える

 西武渋谷店の閉店のニュースは瞬く間に広がり、多くの人を驚かせた。9月末で開業から半世紀、58年の歴史に幕を閉じる。

 西武渋谷店はライバルの東急グループのお膝元である渋谷に1968年にオープンした。「ファッションの西武」のシンボルとして、西武池袋本店に次ぐ旗艦店舗だった。閉店の直接的な理由は、地権者と賃貸借契約の合意に至らなかったこととされる。だが、周辺の再開発で次々と新しい大型の商業施設が立ち並ぶなか、老朽化した建物設備を含めて若者への求心力を失っていたことは否めない。

 一方、東急グループはひと足早く、渋谷駅の再開発で2020年3月に東急東横店を閉店した。さらに、2023年1月には東急百貨店本店の営業も終了している。東急本店の跡地には現在、地上36階、高さ155メートルの大型商業施設(2029年竣工予定)が建設中だ。渋谷の新たな名所になることは想像に難くないが、ここに再び東急百貨店が入居するかは明らかになっていない。

 西武渋谷店の閉店で、長らく渋谷のランドマークとしてお互いに切磋琢磨した百貨店が姿を消すことになる。若者の流行の発信地・シブヤから百貨店が消えることは、百貨店の凋落を象徴している。

建て替え問題・再開発を機に姿を消す百貨店

 名古屋では2月、地元で長年親しまれてきた老舗の名鉄百貨店本店が再開発計画に伴い70年以上の歴史に幕を閉じた。7月24日、親会社の名古屋鉄道は9月1日付で名鉄百貨店の解散を公表した。一方、再開発計画は建設コストの高騰や施工業者の辞退で白紙となり、混乱が広がっている。

 大手系列、電鉄系、地場百貨店に限らず、百貨店の閉店と表裏一体にあるのが老朽化による建て替え問題、そして再開発だ。

 百貨店の多くは高度経済成長期の1960年代、全国で次々とオープンした。典型的な装置型産業の百貨店も開業から50~60年以上が経過し、とうの昔に減価償却を終了している。だが、地方都市では人口減少と流通業界の激変で街の中心部が空洞化し、市場収縮と客足が変化したタイミングで百貨店の新築はあまりにもリスクが高すぎる。そもそも資金的な余裕もない。

 一方、都市部の商業地は、街の再開発事業の時期と重なる。業績低迷が続くなかで、百貨店が再開発を区切りに営業終了を決断することは、ある意味、時代にあらがえない宿命かもしれない。