増田和史
各地で結婚式場の破たんが相次いでいる。九州や北陸では地域トップクラスの結婚式場の経営会社が破産し、予定した挙式が突然キャンセルされ衝撃が走った。婚姻数は長年低迷し、「地味婚」「ナシ婚」も浸透してきた。市場縮小が続くなか、追い打ちをかけるようにコロナ禍に見舞われ、業界全体が大打撃を受けた。コロナ禍後は反動増も期待されたが、結婚式への意識やニーズが多様化し、コロナ前に戻るのは難しい。装置産業の典型例でもある結婚式場は、華美な設備投資を誇った業者ほど苦境に陥っている。

再生可能エネルギー発電の一端を担う木質バイオマス発電で、事業者の経営破綻や事業の休停止が目立つ。投資した資金を回収できず、多額の負債を抱えて法的整理や苦境に陥り、事業を他社に譲渡するケースもある。新規参入が増え、発電燃料の木材チップや木質ペレットの需要が想定外に増えたことや、ウッドショック、円安、輸送費の上昇などが重なって調達コストが上昇し、採算が悪化したことが背景にある。脱炭素社会の実現に向け、国の施策FIT(固定価格買取制度)に沿って木質バイオマス発電は進んできたが、2012年の施行当初から状況は大きく変化した。ブームが終焉を迎えて、これから業者の淘汰が加速すると指摘する専門家も少なくない。

ことしも受験シーズンが本番を迎え、受験生たちの戦いが始まった。ところが、年明け早々の1月4日、新宿にある老舗の大学受験予備校「ニチガク」が教室を閉鎖した。歴史と実績ある予備校として知られたが、受験直前の突然の事業停止で、生徒だけでなく従業員、講師も置き去りにして波紋が広がった。ニチガクの行き詰まりは経営環境が激変し、淘汰の波に晒される学習塾の苦境を浮き彫りにした。少子化が進むなかで、入試形態が多様化し、受験のトレンドも変化している。そこに、コロナ禍を転機に出現した新たなツールやプレイヤーが競争を激化させている。2024年は学習塾の倒産と休廃業・解散が過去最多を記録し、先行きの厳しさは増すばかりだ。

コロナ禍で雇用を守るために設けられた雇用調整助成金の特例措置には、3年間で6兆円以上が投じられた。窮地に陥った企業の雇用維持に大きな役割を果たしたが、コロナ禍が収束した2023年から不正受給の摘発が相次いでいる。これまでに不正受給した1437社の社名が公表されたが、さらに件数は増え続けている。悪質な場合、刑事事件に発展するケースもあり、社名が公表された企業の倒産リスクが顕在化している。

2024年5月の全国企業倒産は1009件(前年同月比42.9%増)で、2013年7月(1025件)以来、10年10カ月ぶりに月間1000件を超えた。件数は26カ月連続で前年同月を上回り、連続記録は歴代3番目の長さまで伸びた。コロナ禍の企業倒産は、ゼロゼロ融資に代表される各種支援策のかいもあって、歴史的な低水準に封じ込められた。だが、コロナ禍の落ち着きに反比例するように増勢に転じている。さらにコロナ禍の出口で、円安・物価高・人手不足に見舞われ、傷んだ企業に追い打ちをかけている。このペースをたどると、倒産は12年ぶりに年間1万件超えが現実味を帯びている。

2023年度(2023年4月~2024年3月)の全国企業倒産は、9053件(前年度比31.5%増)と9年ぶりに9000件台に乗せ、増勢を強めた。コロナ関連支援策で歴史的な低水準をたどった企業倒産は、ここに来てコロナ禍の抑制策のツケが一気に回ってきた格好だ。幅広い業種で倒産が増えているが、なかでも「農業」分野の倒産がジワリと増勢を強めている。2023年度の倒産は82件で、年度ではこれまで最多の前年度(76件)を上回り、2年連続で過去最多を更新した。農業はもともと天候や災害リスクが高く、後継者問題や人手不足、輸入農産物との競合などで、採算低迷の克服が課題になっていた。そこにコロナ禍での需要急減、エネルギーコストの高騰、伝染病の流行などが一挙に押し寄せ、苦境が顕在化した。農業分野の法人化が進み、企業として農業経営に取り組むケースも増えているが、小規模経営や新興企業など経営基盤が脆弱な企業が多く、農業への夢はまだ実現が難しいのが実情だ。

2023年の全国企業倒産は8690件(前年比35.1%増)で、4年ぶりに8000件を超えた。増加率は1992年の31.2%増を上回り、31年ぶりの高水準で増勢が鮮明になっている。業種別で、厳しさが目立つのが印刷業だ。過当競争による消耗戦の挙げ句、コロナ禍と物価高に直面してさらに苦境に立たされている。

全国に23カ所の歯科クリニックを展開していた(医)社団友伸會(豊島区)が2023年9月末、負債37億3370万円を抱えて東京地裁に民事再生法の適用を申請した。マウスピースを使った歯列矯正ブームを追い風に、一気に国内大手の歯科クリニックグループに上り詰めた。しかし、その原動力は患者の治療費の前金という“麻薬”だった。クリニックを増やし、患者が増えると潤沢な前金で得たキャッシュを再投資に回す好循環を生んだが、成長が鈍化するとたちまち資金繰りがひっ迫した。これまで、英会話教室やエステ・脱毛サロン、旅行代理店など、多くの倒産劇で繰り返された前金ビジネスの失敗と同じだ。成長を謳歌(おうか)した企業の裏側に潜む危うさを追った。

今年6月と8月、木材業界で相次いで発生した大型倒産が波紋を呼んでいる。コロナ禍の収束とともに木材価格は落ち着きを取り戻しつつあるなか、なぜ今、このような事態となったのか。

#22
信用調査マンはどうやって企業倒産の兆候を見抜くのか。

2022年12月、経営者の個人保証に依存しない事業融資を進める「経営者保証改革プログラム」が公表された。2014年に適用開始された「経営者保証に関するガイドライン」をバックグラウンドに、スタートアップ企業の経営者に連帯保証を求めない創業時の融資、民間金融機関への監督強化、(要件を満たした場合の)経営者保証の解除など、経済産業省、金融庁、財務省が連携した施策・指針が盛り込まれた。これからの中小企業支援の柱になる施策として注目されている。

企業倒産は「実質無利子・無担保融資(ゼロ・ゼロ融資)」など手厚いコロナ支援策で抑え込まれていた。だが、今年に入り増勢を強めている。2022年度上半期(4~9月)の企業倒産は3141件(前年同期比6.9%増)で、半期推移ではコロナ禍以降で初めて前期を上回った。月別でも2022年4月から9月まで6カ月増加を続け、9月は前年同月比18.6%増の599件と今年最多を記録した。歴史的な低水準が続いた企業倒産が、アフターコロナが視野に入る時期に増勢に転じたのは円安や物価高の影響だけではない。むしろ倒産の封じ込めに効果を見せた支援策の息切れと副作用が、より深刻なリスクに浮上したことを示している。

コロナ禍と資材高により、ゼネコンの採算悪化が顕在化してきた。中小建設業者を中心に新型コロナ倒産が増え、今年上半期の建設業の倒産件数は14年ぶりに増加した。苦境の実態について、データで解説する。

「新電力」の電力小売業界が揺れている。電力の調達価格の高騰で仕入額と販売額に逆ざやが生じ、販売するだけ赤字。次代のニュービジネスの代表格と思われた新電力が存続の危機にひんしている。新規申込みを停止する新電力が相次ぎ、採算改善が見通せず電力小売事業からの完全撤退を決断する新電力も出てきた。業界が騒然とするなか、3月25日に自治体や官公庁向けの電力販売で業績を伸ばしたホープエナジー(福岡市)が負債約300億円を抱えて破産を申請した。

自動車メーカーの業績回復が鮮明となる一方で、部品メーカーの経営悪化は深刻な状況にある。こうしたなか、自動車部品大手のマレリ(旧カルソニックカンセイ)が私的整理の一つである事業再生ADR(裁判以外の紛争解決)を前提に金融機関との調整に入るなど、コロナ禍を発端に事業環境の悪化が際立ってきた。部品メーカー各社は生き残りをかけた正念場を迎えている。

新型コロナの感染拡大により、エンターテインメント業界で苦境に立たされる企業が増えている。昨秋に民事再生法を申請した、70年の歴史を持つ劇団「わらび座」もその一つだ。今後、非営利組織に体制を変えて再建に取り組む予定で、芸術文化を守る新たなスキームとして注目されている。

新型コロナウイルスに苦しむ企業に実質無利子・無担保で融資する「ゼロゼロ融資」は、企業の資金繰りを支え、倒産件数は歴史的な低水準となった。だが、新規感染者数が急速に減少し、経済活動も本格再開に動きだすなか、過剰債務問題が深刻化する可能性がある。コロナ禍で企業はどれほど借入金を増やしたのか、データを基に解説する。

百貨店の苦境が深刻さを増している。全国の主要百貨店70社の最新期の売上高は合計4兆996億円で、前期より1兆5189億円も減少した。新型コロナ感染拡大で頼みの綱のインバウンド需要が消失し、休業要請や時短営業が襲いかかった。

コロナ禍でゴーイングコンサーン注記(GC注記)や「継続企業の前提に関する重要事象」の記載企業が増えている。上場企業が決算発表で開示するこれらのリスク情報は、大幅赤字や財務の脆弱(ぜいじゃく)化、資金繰りの悪化など、経営に黄信号が灯ったサインでもある。コロナ禍が長引き、年間を通じて直撃を受けた2021年3月期決算は飲食業などを中心に業績ダウンが続出した。GC注記や「重要事象」の記載企業数は、前年同期から6社増の89社にのぼり、2012年3月期以来、9年ぶりの高水準となった。

地方を救うはずだった「空港民営化」。コロナ禍で状況は一変、巨額の赤字が続けば虎の子の資本を食いつぶし、出資企業や所有権者に支援を要請する可能性も出てくる。収益を見込んだ出資企業、地域活性化と税収増を見込んだ国や自治体にとっては、まさに本末転倒の事態だ。
