エッチトの共同創業者であるロバート・ワチェン、ギャビン・ウベルティ、クリス・チューの各氏PHOTO: POPPY LYNCH FOR WSJ
【サンノゼ(カリフォルニア州)】米新興企業Etched(エッチト)は一見、多くの注目を集める人工知能(AI)スタートアップと似ている。20代前半のハーバード大学中退者3人が共同創業し、わずか4カ月前にはアイデアに過ぎなかった製品の強みを武器に、約20億ドル(約3200億円)の資金を迅速に調達した。
しかし、他の多くのスタートアップとは異なり、エッチトが手がけるのはソフトウエアではなく半導体だ。この製品カテゴリーは資本コストが高く開発サイクルも長いため、シリコンバレーでも若者の野心より経験が物を言う領域だった。
テック投資家の間では「半導体業界の若者たちには投資するな」というのが常識だったと、同社の3億ドルの資金調達ラウンドを主導したセコイア・キャピタルのゼネラルパートナー、ソニア・ホアン氏は語る。「この若者たちは何でもできると思っている。インターネットの世界ではそうかもしれないが、半導体の世界では、スタートアップは『無実が証明されるまで有罪』だという感覚があった」
エッチトは、社内にテスト用のミニデータセンターを構築するなどの猛烈な取り組みを経て、今や重要な節目に達した。初の顧客として、秘密主義で知られるウォール街のクオンツ取引大手ジェーン・ストリートと契約を結んだのだ。提供する製品は、高速な推論コンピューティング向けに最適化されたAIプロセッサーを搭載したサーバーラックだ。エッチトは10億ドル超の受注を獲得し、すでに半導体の出荷を開始している。
ジェーン・ストリートは、エッチトの企業価値を210億ドルと評価する7億ドルの資金調達ラウンドも主導した。この評価額は、米半導体大手エヌビディアがAI用半導体開発会社グロックの技術ライセンスと経営幹部の採用のために12月に支払った200億ドルを上回る。
エッチトによると、台湾積体電路製造(TSMC)からテスト用半導体を受け取ってから、推論ワークロード――AIがユーザーの質問に応答するための計算プロセス――を稼働させるまでにかかった日数はわずか44日で、通常6カ月以上かかるプロセスを大幅に短縮した。
「スタートアップが構築したAIチップとしては、初回の試みで成功した唯一の存在かもしれない」と、共同創業者で社長のロバート・ワチェン氏は述べた。
共同創業者たちは半導体業界への参入が遅かったかもしれないが、同社には業界の豊富な専門知識を持つ人材がそろっている。従業員約400人のうち約15%が業界リーダーのエヌビディアで勤務した経験がある。エッチトは他の半導体企業からも積極的に採用を進めてきた。7月に引退するまでエヌビディアのデータセンターシステム・エンジニアリング担当バイスプレジデントを務めていたジミー・デーリー氏は、出資者の1人だという。







