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工場では怒号が飛び交い、泣き出す従業員も...家業を継いだ老舗メーカー経営者が「社員が自ら報酬額を申告する」制度を始めたワケを明かします。組織を強くするルールと弱くするルールの違いとは。※本稿は、MIMIGURI代表取締役Co-CEOの安斎勇樹、弁護士の水野 祐『組織の成果を最大化する ルールのデザイン』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)の一部を抜粋・編集したものです。
「無自覚な性悪説」が
組織の創造性を蝕んでいく
ルールをつくる際、人をどのような存在として捉えているのかという価値観が、逆説的に組織内の1人ひとりの振る舞いに影響します。
性悪説に立ち、監視や罰則を強化するようなルールデザインをすれば、組織の閉塞感は高まります。メンバーはルールの抜け穴を探したり、いかに自分の利益を最大化するかという利己的な行動に走りやすくなるでしょう。
他方で性善説に立ち、「人は本来、より良くあろうとするポテンシャルを秘めている」という前提でルールデザインをすれば、組織には心理的安全性が担保され、その土壌には信頼関係が育まれるでしょう。
もちろん、ルールを破る人が出てくる可能性はゼロではありませんが、その場合、単にルールを追加するのではなく、採用基準やオンボーディングのプロセスの見直しといった、別の打ち手を考えるべきなのです。
・ルールを守らない人がいるから、もっと厳しくしよう。
・クレームが来るかもしれないから、念のため禁止しておこう。
こうした「無自覚な性悪説」によって「謎のルール」が増大し、そのルールに疑問を抱かず思考停止することが、組織の創造性を蝕んでいくのです。
さらにその前提は多くの場合、組織の「理想とする人間像」と乖離していることが少なくありません。対症療法的なルールデザインによって、かえって理想とする組織文化の実現を阻害してしまうのです。
ルールは「人の行動と思考を方向づけるための規範」です。組織のメンバーを単に制約するためのものではなく、組織の人間観を映し出す鏡であり、組織文化を形成していく強力なツールにもなるのです。
ボトムアップ型の組織に転換し
V字回復を実現した老舗企業
1906年創業の老舗缶メーカー・側島製罐が2023年に導入したのは「自己申告型報酬制度」。社員が自ら報酬額を申告するという制度です(注1)。
2020年、家業を継ぐために入社した石川貴也氏(現・代表取締役)は、組織の現状に失望しました。工場には怒号が飛び交い、叱咤され泣き出す従業員も。給与は社長の一存に委ねられ、従業員は「諦め」の中で働いていました。







