社長・常務・部長・課長・担当者の承認印が並ぶ決裁欄お辞儀ハンコって無駄ですよね?(写真はイメージです) Photo:PIXTA

「会議のための会議」や「事前の根回し」など職場の「謎のルール」。意思決定を遅らせ、組織を思考停止させる要因だ。AmazonとNetflixは、こうした無駄をどう減らしてきたのか。日本企業も見習うべき、抜本的な改革の実例を紹介する。※本稿はMIMIGURI代表取締役Co-CEOの安斎勇樹、弁護士の水野 祐『組織の成果を最大化する ルールのデザイン』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)の一部を抜粋・編集したものです。

「謎のルール」をなくすために
Amazonが始めた取り組み

 もはや何のためにあるのかわからない「謎のルール」が放置された結果、「ルールを守る」ことが目的化した思考停止した人々によって、多くのルールは制定当初の意図や目的を失い、形骸化していきます。

 例えば未だに「お辞儀ハンコ」がまかり通っている組織もあるでしょう。稟議書や社内文書において、目上の上司よりも角度をつけて判を押すという、あの“謎のルール”です。※トップ画像参照

 コロナ禍でペーパーレス化が進み稟議がシステム化された企業もありますが、電子契約サービスの中には「印影の角度を調整できる」機能が搭載されているものさえあります。

 ルールの存在自体が目的化し、従業員から「これって無駄ですよね?」と疑問の声すら上がらない組織は、かなり危険な状態に陥っていると認識すべきです。

 Amazonの創業者ジェフ・ベゾスからCEOを引き継いだアンディ・ジャシーは、Amazonが巨大化するにつれて「不要なルール、会議、承認プロセス」が蓄積し、組織が官僚化することによる意思決定のスピードが急激に落ちていることに強い危機感を抱きました。

 そこで、彼は、組織の肥大化と官僚主義(レッドテープ)を打破するために「ビューロクラシー・メールボックス(Bureaucracy Mailbox:官僚主義メールボックス)」という取り組みを始めました。

 彼は「私たちは、世界最大のスタートアップのように行動したい。もし皆さんが日々の業務の中で、『このルールは無意味だ』『この承認プロセスはただ時間を浪費しているだけだ』と思うような、不要な官僚主義を見つけたら、どんなに小さなことでもいいから私に直接メールで教えてほしい」と全社員向けにメールを送りました(注1)。

(注1)“Message from CEO Andy Jassy:Strengthening our culture and teams” Andy Jassy, 2024
https://www.aboutamazon.com/news/company-news/ceo-andy-jassy-latest-update-on-amazon-return-to-office-manager-team-ratio

不要なルール・プロセスが
455個も見つかった

 驚嘆すべきは、ジャシーがこの取り組みをよくある単なる「目安箱」やトップからのメッセージとして送るだけではなく、専用のプロジェクトチームを組成し、徹底的に機能させたことです。

 導入から約1年で、現場の社員から1500通を超える「無駄なルール・プロセス」の告発メールが届き、実際に455もの不要なプロセスやルールが変更・廃止され、社員のコミュニティでも「何カ月も膠着していた運用の問題についてメールを送ったら、数日後にCEOや役員が直々に動き、あっさりと解決した」といった驚きの実体験が報告されたそうです。