「あの時のあの一言が、どうしても忘れられない…」過去の心無い言葉に、今も振り回されていませんか? 精神科医が、特定の言葉がいつまでも記憶にこびりついて離れない心のメカニズムを解説します。実はその背景には、日常に潜む脳の意外なクセや、記憶の厄介な性質が隠れているかもしれません。過去への執着を手放し、心をフッと軽くするためのヒントをお届けします。(構成/ダイヤモンド社書籍編集局・斎藤順)
※本稿は『精神科医Tomyが教える 1秒で不安が吹き飛ぶ言葉』(ダイヤモンド社)の著者による特別原稿です。

【精神科医が教える】「過去の嫌なひと言」が頭から離れない…記憶を引きずる人が無意識にやっているNG習慣・ワースト3Photo: Adobe Stock

なぜあの一言は忘れられないのか

今日は「なぜあのひと言は忘れられないのか」についてお話ししたいと思います。

お悩み相談や日々の診察で患者様のお話をうかがっていると、「あの時のあのひと言がどうしても忘れられないんです」というお悩みをよく耳にします。

私自身は、良い言葉や印象的な言葉はよく覚えているものの、いわゆる人を攻撃するような言葉で「あのひと言が忘れられない」と引きずってしまうことはあまりありません。だからこそ、なぜそういった現象が起きるのか、推察を交えながらお話ししていきましょう。

1. 広い意味での「トラウマ」になっている可能性

まず1つ目の理由として考えられるのは、そのひと言があまりにも強烈だったために、少しトラウマ化しているというケースです。

精神科領域における「トラウマ(心的外傷)」の厳密な定義は、戦地や事故現場など「一歩間違えれば死んでいたかもしれない」という極限状況に遭遇した際の体験を指します。日常でよく使われるような「遊園地で雨が降ってトラウマになった」というような使い方は、本来の意味とは異なります。

しかし最近では、ひどい言葉を投げかけられたといったことでも、「トラウマと言ってよいのではないか」という広い解釈も出てきています。つまり、本人にとって強烈に心に刻み込まれ、ふとした時にフラッシュバックしてしまう体験は、広い意味でのトラウマと言えるでしょう。

おそらく、言葉そのものというよりも、「ひどく惨めな思いをした」「泣いている時に言われた」という場面全体としてトラウマ化している可能性が高いのです。 こうしたモヤモヤが湧き上がった時は、無理に早く治そうとしたり深刻に捉えすぎたりすると、かえって悪化することがあります。

「またあのことを思い出しちゃったな」と第三者の目で自分を観察しつつ、今やるべきことに集中していれば、自然と時間は流れていくはずです。

2. 「頭がお暇」な状態がネガティブな思考を呼ぶ

2つ目の理由は、私がよく提唱している「頭がお暇(おひま)理論」で説明ができます。

人間は、目の前のことに集中せずぼんやりとしていると、現実からかけ離れた考え事ばかりするモードに入ってしまいます。脳科学ではこれを「デフォルトモードネットワーク」と呼びますが、この何もしていない状態でも脳は意外とエネルギーを消費しています。

考え事ばかりしていると、だんだんと嫌な記憶が引き出され、「そういえばあんなひどいことを言われたな」と思い出してしまうのです。これを防ぐには、頭がお暇な状態を解除するしかありません。

デフォルトモードネットワークの対義語に「タスクポジティブ」という言葉があります。これは課題に集中している時の脳のモードです。勉強や家事など、今やるべき行動に「集中、集中」と意識を向け、余計なことを考えないように脳を切り替えていくことが大切です。