1990年代中盤に入ると、彼らはやり方を一変する。開発のプロセスに、アーリーアダプターたちを呼び入れることにしたのだ。早い段階で試作品を試してもらい、実際に使っているところを観察して、ユーザーにウケた点・ウケなかった点を見極めた。
その後、3Mがこの新しいアプローチと従来のやり方とを比較してみたところ、結果は驚くべきものだった。ピーター・シムズは著書にこう書いている。
《2002年に発表された調査報告によれば、ユーザー参加型の開発戦略を用いたプロジェクトは、5年後に平均1億4600万ドルの利益を生み出した。これは従来の社内ブレインストーミング型プロジェクトによる平均利益の8倍超に匹敵する。》(注5)
100億ドル企業になっても
失敗はなくならない
早期の失敗を奨励する「フェイルファスト」手法、ソフトウェア開発における反復学習的な「スクラム」手法など、リーン・スタートアップのようないわゆる「失敗型」のアプローチは各所で見られるようになってきた。もちろん状況に応じた使い分けは必要だが、どのアプローチも試行錯誤から大きな恩恵を受けていて、実に効率的なものが多い。
『失敗の科学 成長する組織の条件』(マシュー・サイド著、有枝 春訳、ディスカヴァー・トゥエンティワン)
「失敗型」のアプローチでとくに注目すべきは、成果そのものよりも、トップダウン方式を重視した従来の価値観に風穴を開けたことだ。「失敗型」アプローチをとるには、物事を素直に受け入れる気持ちと、根気強さが欠かせない。
オンライン共有サービスを開発したドリュー・ヒューストンも、起業によってこのマインドセットを学んだ。「本当に大変な経験をしました」と彼は語る。
「ある日、世界の頂点に立ったと思ったら(中略)次の日には大きなバグが見つかって、ダウンしたサイトを前に頭を掻きむしるはめになったり……。(中略)そういうことは今でもよくあるんですよ(注6)」
2014年、ヒューストンの会社には100億ドルを超える評価額がついた。彼が開発したファイル共有サービスはDropboxと呼ばれる。







