「最近、人の名前が出てこない」「判断に時間がかかる」――そんな変化を年齢のせいだと思っていないだろうか。50代以降、仕事で差がつく原因は、経験よりも「脳のコンディション」にある。元オックスフォード大の医学研究者であり、「糖と脳」の専門家として知られる医師・下村健寿氏の著書『糖毒脳――いつまでも「冴えた頭」でいるために知っておきたいこと』をもとに、第一線で活躍し続ける人に共通する習慣を紹介する。(構成/ダイヤモンド社・石井一穂)

50代になっても「第一線で活躍できる人」の特徴・ベスト1Photo: Adobe Stock

50代で「差」がつき始める理由

50代になると、不思議なことが起きる。

人の名前がすぐに出てこない。
新しいことを覚えられない。
会議で判断が鈍くなった気がする。

同じような経験を積み、同じような実績を残してきたはずなのに、第一線で活躍し続ける人がいる一方で、能力の衰えを感じ、徐々に第一線から退いていく人もいる。

そんな変化を、「年齢だから仕方ない」と考えている人も少なくないだろう。

しかし、元オックスフォード大の医学研究者であり、「糖と脳」の専門家として知られる医師・下村健寿氏は、著書『糖毒脳』の中で、年齢以上に脳の働きを左右する要因があると指摘している。

それが、「糖」だ。

活躍し続ける人は「脳を壊さない」

「糖」と聞くと、太る原因や糖尿病を思い浮かべる人が多い。

だが下村氏は、糖の本当の怖さは脳への影響にあるという。

過剰な糖の摂取を長年積み重ねた結果として発症するのが「糖尿病」ですが、じつは糖尿病の人は、アルツハイマー病になりやすいのです。
米国ミネソタ州南東部の地域住民を対象とした大規模研究では、アルツハイマー病患者の81%が2型糖尿病、または糖尿病予備群であったと報告されています。

(下村健寿著『糖毒脳』より)

糖を摂ると、血糖値を下げるためにインスリンが分泌される。

じつはインスリンは、脳神経細胞同士の情報伝達を助けたり、アルツハイマー病の原因とされるアミロイドβから脳を守ったりする重要な役割も担っている。

ところが糖を摂りすぎる生活が続くと、インスリンは効きにくくなり、その働きも乱れてしまう。

その結果、脳の認知機能は少しずつ低下し、仕事に必要な判断力や記憶力、思考力まで影響を受けることになるのだ。

「甘いものを食べていないから安心」は大きな誤解

では、甘いお菓子を食べなければ問題ないのだろうか。

そう考える人もいるかもしれない。

しかし、それも誤解だ。

糖は、私たちが普段口にしている多くの食品に含まれている。

ご飯。
パン。
麺類。
お酒。

本人は健康的な食生活を送っているつもりでも、知らないうちに糖を摂りすぎているケースは少なくない。

50代になっても第一線で活躍できる人の特徴

だからといって、糖を完全に断てばいいわけではない。

下村氏は極端な糖質制限にも警鐘を鳴らしている。

糖は脳にとって欠かせないエネルギー源だからだ。

重要なのは、「制限」ではなく「制御」である。

何を食べるか。
どれくらい食べるか。

血糖値を急激に上げる食べ方を避けること。

そうした毎日の積み重ねが、10年後、20年後の脳をつくっていく。

脳の働きを支える生活習慣を知り、糖と上手につき合っている人こそ、50代になっても第一線で活躍できる人なのである。

下村健寿(しもむら・けんじゅ)
福島県立医科大学卒。同大副理事、医学部病態制御薬理医学講座主任教授。現役内科医でもある基礎医学研究者。日本糖尿病学会東北支部学術評議員。日本内科学会認定内科医。医学博士。群馬県前橋市出身。2004年、日本で働いていた大学医学部から、英国オックスフォード大学への就職を試み、執念の就職活動を実らせて成功。オックスフォード大学正式研究員として、世界を代表する生理学者フランセス・アッシュクロフト教授の薫陶を8年間受けた。その間、新生児糖尿病治療法の発見という世界的快挙に貢献。新生児糖尿病の最重症型であるDEND症候群の脳神経症状治療有効例を報告した論文は米国神経学会誌「Neurology」よりEditorial論文に選出された。貢献を認められて2006年と2010年にオックスフォード大学メリット賞を2度受賞。日本帰国後は、新生児糖尿病に加えて肥満・2型糖尿病などの生活習慣病について、インスリン分泌や脳機能の観点から研究している。