50代になると、「頭の回転が落ちた」と感じる人は少なくない。しかし一方で、ベテランになっても判断力や発想力が衰えず、第一線で活躍し続ける人もいる。その差は、能力ではなく日々の習慣にある。元オックスフォード大の医学研究者であり、「糖と脳」の専門家として知られる医師・下村健寿氏の著書『糖毒脳――いつまでも「冴えた頭」でいるために知っておきたいこと』をもとに、ベテランになっても「冴えた頭」を保つ人の共通点を紹介する。(構成/ダイヤモンド社・石井一穂)
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「最近、頭の回転が落ちた」と感じる人たち
50代になると、多くの人が変化を感じ始める。
人の名前が出てこない。
会議で言おうと思っていたことを忘れる。
新しいことを覚えるのに時間がかかる。
「年齢だから仕方ない」
そう思ってしまう人も少なくない。
しかし、元オックスフォード大の医学研究者であり、「糖と脳」の専門家として知られる医師・下村健寿氏は、著書『糖毒脳』で、脳は年齢だけで衰えるわけではないと述べている。
頭が冴えている人の脳では何が起きているのか
仕事ができるベテランほど、判断が速い。
発想が柔軟。
新しい知識も吸収できる。
その違いを生むのが、「BDNF」という物質だ。
人間の脳は海馬でのみ、新たな神経細胞が発生するとわかっています。
この働きを促してくれる物質が「脳由来神経栄養因子(BDNF)」です。
BDNFは「肥料」のようなものです。
新たな神経細胞になる「タネ」が埋まっている肥沃な土壌である海馬に、BDNFという肥料をたっぷりとかけることで、新たな神経細胞が芽生えて成長していきます。
これが、認知症になりにくい脳をつくることにもつながっています。
さらにBDNFには細胞の新生だけでなく、脳の中で生き残っている神経細胞同士の「つながり(シナプス)」を増やしたり、そのつながりを強化したりする作用もあります。残っている神経細胞同士の情報伝達の効率を高める「チューンアップ」も行っているのです。先述のとおり、神経細胞の数が減っていても情報伝達の効率が飛躍的に上がれば、脳全体のパフォーマンスは向上します。
(下村健寿著『糖毒脳』より)
つまり、「頭が冴えている」とは、生まれつきではなく、脳のネットワークが鍛えられている状態なのである。
BDNFを増やす「たった一つの習慣」
では、どうすればBDNFは増えるのか。
答えはシンプルだ。
運動である。
この奇跡のような役割を果たすBDNFを作るために必要なのが、「運動」です。
近年の研究から、運動をすると筋肉から「ミオカイン」と呼ばれる一連の生理活性物質が分泌されることが明らかになりました。
ミオカインは脂肪や肝臓、膵臓など様々な臓器に作用して代謝を調節したり、全身の炎症を抑制したりと、体にとって非常に良い効果をもたらすことがわかっています。
このミオカインが脳にも直接作用し、脳の中でBDNFの発現を促すのです。
(下村健寿著『糖毒脳』より)
筋肉を動かす。
すると筋肉が脳へ信号を送り、脳の肥料が増える。
これが、50代になっても記憶力や判断力を維持できる理由の一つなのである。
50代になっても頭が冴えている人の特徴
「運動」と聞くと、ランニングや筋トレを想像する人も多い。
しかし、下村氏が勧めるのはもっと簡単な方法だ。
皆さんにおすすめしたい運動内容は、拍子抜けするほど簡単なものです。
それは、ウォーキングです。
息が軽く切れる程度の早足で、1日30分程度、週に合計で150分以上歩く。
これが、医学研究に基づくアルツハイマー病の予防に有効とされる運動量です。
努力や根性は一切いりません。アスリートを目指すのではないのですから、心から楽しんで運動してください。
通勤時に1駅分を歩いて、移り変わる景色を楽しみながら散歩する。週末に気の合う友人や家族と一緒に散歩する。そんな楽しい時間として過ごしてみてください。
(下村健寿著『糖毒脳』より)
一駅歩く。
昼休みに散歩する。
休日に家族と歩く。
こうした習慣を長く続けることが、何十年後の脳を変えていく。
50代になっても頭が冴えている人は、才能が違うわけではない。
脳を育てる習慣を続けている人なのである。
福島県立医科大学卒。同大副理事、医学部病態制御薬理医学講座主任教授。現役内科医でもある基礎医学研究者。日本糖尿病学会東北支部学術評議員。日本内科学会認定内科医。医学博士。群馬県前橋市出身。2004年、日本で働いていた大学医学部から、英国オックスフォード大学への就職を試み、執念の就職活動を実らせて成功。オックスフォード大学正式研究員として、世界を代表する生理学者フランセス・アッシュクロフト教授の薫陶を8年間受けた。その間、新生児糖尿病治療法の発見という世界的快挙に貢献。新生児糖尿病の最重症型であるDEND症候群の脳神経症状治療有効例を報告した論文は米国神経学会誌「Neurology」よりEditorial論文に選出された。貢献を認められて2006年と2010年にオックスフォード大学メリット賞を2度受賞。日本帰国後は、新生児糖尿病に加えて肥満・2型糖尿病などの生活習慣病について、インスリン分泌や脳機能の観点から研究している。








