Photography by Qilai Shen for WSJ
【寧夏回族自治区銀川(中国)】エマ・ガオ氏(50)が2007年、中国西北部に位置する寧夏回族自治区の砂嵐吹き荒れる丘陵地でカベルネ・ソーヴィニヨンを栽培するというとっぴな決断を下したとき、自身のワインを外国の有名レストランに販売することなど、ほとんど考えていなかった。
今では、彼女が造るピノ・ノワールやカベルネ、シャルドネは、米ニューヨークのミシュラン星付きレストラン「グラマシー・タバーン」や伊ミラノの高級広東料理店「バ」、英ロンドン中心部の高級インド料理店「ザ・シナモン・クラブ」などで提供されるようになった。
世界のソムリエたちが仏ボルドーや伊バローロのワインに飽きた飲み手を新たな体験で魅了しようと試みる中、フランスで修業を積んだガオ氏は中国ワインの国外展開を後押ししている。中国ワインの輸出高は今年上半期に7500万ドル(約120億円)に達し、昨年同期の3倍を記録した。「ワインの世界は非常に開かれていて、新しいテロワール(ブドウ畑を取り巻く気候や土壌)、新しい哲学に対して好奇心を持っていると思う」と同氏は話す。
中国は2010年代に世界的な主要ワイン市場として台頭した。だが経済の低迷と 共産党の公式行事での「禁酒令」 を背景に、国内のワイン消費量は20年から25年にかけて半分以下に落ち込んだ。これはボルドーやオーストラリアのワイン輸出業者だけでなく、中国国内のワインメーカーにも大きな打撃を与えている。
ガオ氏のワイナリー「シルバーハイツ」は、その中でも数少ない明るい材料だ。中国国内での販売は好調を維持しており、5年前にはほとんどなかった輸出が、現在では事業の3分の1を占めるまでに成長した。ボトルの小売価格は20ドルから200ドル前後で、国外での最大市場は東京やシンガポールといったアジアの都市だ。
米ニューヨーク市のレストラン経営者ランドール・レスティアーノ氏はファンの一人だ。同氏は昨年10月までグラマシー・タバーンの飲料ディレクターを務めていた。同僚から中国ワインを試してみるよう勧められた際、懐疑的だったものの、シルバーハイツのピノ・ノワールを口にした。
「ここには何か個性を主張しているようなスパイスというか、かすかな風味がある。それが中国のテロワールなのだろうと思う」とレスティアーノ氏は話す。「『よし、決めた。乗った。全部欲しい。できるだけ早く送ってくれ』という感じだった」
ガオ氏は、ワイン愛好家だった父親の助言を受け、1999年にフランスでワインの勉強を始めた。仏南東部に位置するローヌ渓谷のワイン産地にある専門学校リセ・ヴィティコル・ドランジュで1年間、試飲や販売について学んだ後、名門ボルドー大学ワイン醸造学研究所に進み、ワイン造りの技術についてさらに学んだ。ガオ氏は数少ない中国人学生の一人で、周囲には何世紀も続くワイン農園の跡取りたちがいた。







