空港で出発を待つ外国人たち写真はイメージです Photo:PIXTA

少子化が進む日本で、外国人留学生の受け入れを止めることは現実的ではない。一方で、大学や研究機関には未公表の研究成果や個人情報など、守るべき情報も数多く存在する。ドラマ『VIVANT』で公安監修を務めた元公安捜査官が、留学生を受け入れながら情報を守るために必要な対策を解説する。※本稿は、セキュリティコンサルタントの勝丸円覚『日本を静かに侵食するスパイの手口』(青春出版社)の一部を抜粋・編集したものです。

少子化が進む日本で
留学生受け入れは必須に

 留学生を受け入れること自体は、これからの日本にとって避けがたい流れです。特に地方の学校や大学は、少子化と人口減少の影響を強く受けています。学生数が減れば、学校の運営そのものが難しくなる。地方の公共交通や生活インフラと同じで、人がいなければ維持できないものが増えているのが現実です。

 したがって、留学生に来てもらいたい、外国人に地域に入ってもらいたいという発想が出てくるのは、ある意味では当然です。留学生が人口にカウントされることで地方交付税が増えますし、若い人が増えれば、その地域の学校や商店、交通、アルバイトの場も維持されやすくなる。

 熊本県のように、半導体の最大手、台湾のTSMC(台湾積体電路製造)の進出をきっかけに地域が潤うこともあります。そうした現実を見れば、本来なくなってしまうはずのインフラが残り、整備されるなら、ある程度の受け入れはやむを得ないという考え方が出てくるのも理解できます。

 東大のような一流大学であっても、今後の少子高齢化を考えれば、留学生の存在は無視できません。まして地方の国立大学や私立大学であれば、なおさらです。

 留学生の受け入れを完全に止めることは現実的ではないし、今後もその流れは続くと思います。

 だからこそ必要なのは、「受け入れるか、受け入れないか」という議論ではなく、どういうルールのもとで受け入れるかです。

 これは都心か地方かという単純な二者択一ではありません。結論から言えば、スパイはどちらも狙っています。都心には大学や研究機関、企業が集中しており、人も情報も多い。一方で地方には、地方ならではのやりやすさがあります。

 まず、地方の学校や研究機関は、学術交流を進めながらも、都心の大規模機関ほどセキュリティーに人も予算もかけられないことが多い。

 さらに、地方警察、特に外事を担当する部門は、警視庁のように人数もノウハウも潤沢ではありません。管轄区域は広いのに、監視や把握に使える人員は限られている。

 結果として、地方は目立ちにくく、追い切れず、監視も緩くなりやすい。スパイの側から見れば、これは非常に動きやすい環境です。

留学生を疑うよりも
「情報」を守る仕組みを

 しかも、今はインバウンドが当たり前の時代です。昔であれば、田舎に外国人がいるだけで目立ちました。ところが今は、地方都市や観光地で外国人を見ることは珍しくありません。

 観光客、ビジネスパーソン、留学生、研究者。いろいろな肩書で動けるので、普通に人がいる場所の中に紛れ込める。スパイにとって、これほど動きやすい環境はないと思います。

 東京から日光に行く、白川郷に行く、小田原で落ち合う。どれも「観光」や「出張」で説明がついてしまう。つまり、地方だから目立つ時代ではなくなったのです。

 では、学校側はどうすべきか。

 ここで難しいのは、留学生や外国出身者そのものを問題視することはできないし、そうすべきでもないという点です。大半の人は真面目であり、学びに来ているだけです。実際、私は講演や研修でも、必ず「特定の国の人を差別する話ではない」と前置きします。

 そのうえで、私が学校法人の運営側に、スパイ対策や情報漏洩対策の研修をするときに必ず伝えているのは、企業の経営者に言うことと本質的には同じです。