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自由な研究や活発な交流を支えるため、多くの人に門戸を開いている大学。しかし、その環境はスパイにとっても都合がいいのだという。ドラマ『VIVANT』で公安監修を務めた元公安捜査官が、教育・研究現場がスパイに狙われる理由を解説する。※本稿は、セキュリティコンサルタントの勝丸円覚『日本を静かに侵食するスパイの手口』(青春出版社)の一部を抜粋・編集したものです。
スパイが大学で狙うのは
「知」と「人脈」の2つ
学校や大学の研究室がスパイに狙われやすい理由は、非常に単純です。そこには、スパイがほしがるものが最初から集まっているからです。
1つは「知」です。まだ商品化されていない研究成果、基礎研究のデータ、将来の技術につながる発想や仮説、優秀な学生や研究者の頭の中にあるアイデア。こうしたものは、企業の完成品以上に価値を持つことがあります。
なぜなら、完成品は買うことも真似することもできますが、その1歩手前にある研究の過程や未公表の成果は、先に押さえた者が圧倒的に有利になるからです。
もう1つは「人脈」です。学校や大学の研究室は、研究者、学生、企業、行政、海外機関などが交わる場所です。
ここで築かれた関係は、研究の世界だけにとどまりません。共同研究の相手、指導教員とのつながり、卒業後に進む企業や研究機関、その先の紹介先まで含めれば、非常に広いネットワークに通じています。
スパイは目の前の相手そのものだけを狙うのではありません。その人が持っているリスト、その先にある人脈、その人を踏み台にして届く情報に価値を置いています。学校や大学の研究室は、その意味で格好の入り口なのです。
大学は企業よりも
セキュリティが緩い
では、企業と比べて何が違うのか。もちろん、化粧品メーカーや医薬品メーカーなどの研究所も狙われます。企業は競合他社の産業スパイにもさらされていますから、自社の製品や研究データを守る必要がある。
したがって、一般に企業の研究所のほうが、学校や大学の研究室よりもセキュリティーにお金も人もかけています。
それに対して、学校や大学の研究室は、どうしても「開かれた場」であることが前提になります。
学術交流があり、人の出入りがあり、外部から研究者を招き、留学生を受け入れ、共同研究も行う。そこに大学らしさ、学問の自由、研究の発展があるのですが、同時にそれは、スパイにとっても入り込みやすい環境になります。比較の問題として、ガードが緩い。だから狙われるのです。
理工系は特に魅力的です。優秀な理工系の学生、修士課程や博士課程にいる研究者、将来、企業や研究機関の中核を担う人材は、スパイにとって非常に価値が高い。研究成果そのものもほしいし、将来的な人材としても見ています。
だからといって文科系は関係ないかというと、そうではありません。スパイは投網方式でも動きます。まず広く網を投げる。そこで面白そうな人脈、使えそうな人、先につながる人物が引っかかれば、後から深く追っていく。
文科系であっても、そこで出会う人脈、その先にある企業や官庁、研究者とのつながりに価値がある。ということは、学部を問わず狙われる可能性があります。
専門分野の違いだけで安心することはできません。学校や大学の研究室そのものが、「知」と「人のつながり」が集まる場として見られているのです。
「文化交流」と「影響力工作」
その境界線はどこにあるのか
この問題を考えるうえで、以前から指摘されてきたのが「孔子学院」です。
中国政府が出資した非営利の教育機関で、日本でもいくつかの大学に設置されましたが、北欧諸国などでは、「これは単なる中国語教育や文化交流ではなく、中国による影響力工作、場合によっては洗脳教育の入り口になり得る」という認識から、国として廃止に動いたところもあります。







