そしてこのような人たちを数百人、数千人と集めれば、平均的にはほぼ同じグループになっています。

 しかし、ルールによって30760ドルの人がランクが変わらないのに対し、30780ドルの人ではランクが上がります。もしランクが売上に影響を与えるなら、この「ほんのわずかな差」のところで結果が変わるはずです。

 そこで、閾値のすぐ上とすぐ下を比べます。ほぼ同じ人たちなのに、ルール上の扱いだけが違う。その差を観察すれば、ランクの効果が見えてきます。これがRDDの基本的な考え方です。

グルメサイトの星は
本当に予約を増やすのか

 RDDのポイントは、「閾値の近くでは、ほとんど同じ人たちが分かれている」という点です。ここで見てきたように、ルールが機械的に決まり、閾値が存在するのであれば、そこには偶然の実験が眠っている可能性があるのです。

 RDDは、その閾値を利用する方法です。ランダムにくじを引いたわけではありません。しかし、閾値のすぐ近くに限って見れば、ランダムに割り振られているような状態が自然に生まれているのです。

 インターネットでレストランを検索すると、ほぼ例外なくレビューサイトの「星」が表示されます。星が少ない店を避け、星の多い店を選ぶ――こうした行動は、私たちにとってごく自然なものになっています。

 その結果、星は単なる飾りではなく、店舗の集客を左右する重要な指標になりました。店舗にとっては経営を左右する数値であり、プラットフォームにとっても表示ルール次第で市場の競争環境を変えてしまう影響力を持っています。

 しかし、ここで重要な問いがあります。星が多いから繁盛するのか。それとも、繁盛しているから星が多いのか。両者はまったく異なる因果関係です。

 もちろん、実在する店舗の星をランダムに操作するA/Bテストは、現実的ではありません。そこで用いられたのがRDDです。

 ここで紹介するのは、アメリカのレビューサイトYelpにおける星の数がレストランの予約に与える影響を調査した事例です(*2)。

*2 Anderson, M., & Magruder, J.(2012). Learning from the Crowd: Regression Discontinuity Estimates of the Effects of an Online Review Database. The Economic Journal, 122(563): 957-989.