Yelpでは、利用者が1~5点で評価をつけ、その平均スコアが算出されます。ただし画面上にはその平均値がそのまま表示されるのではなく、0.5刻みに四捨五入されて表示されます。ここには明確な閾値が存在するのです。
例えば平均スコアが3.74の店と3.76の店を考えてみましょう(図表4-9)。
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実際の平均スコアの差は0.02しかありません。料理やサービスの質に本質的な違いがあるとは考えにくい水準です。しかし、表示上は図表4-9のようにそれぞれ3.5と4.0となってしまい、ユーザーから見える星は0.5も異なります。
このように、実力ともいえる平均スコアはほぼ同じなのに、表示される星だけが違う状況を利用することで、あたかも「同じ実力の店にランダムに異なる星をつけた」かのような比較が可能になります。これがRDDの核心です。
RDDの分析の結果、表示される星は予約状況に大きな影響を与えることが示されました。図表4-10は、ピークタイムである夜7時における予約が可能な割合を示した「予約可能確率」と評価の平均スコアの関係を示しています。
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中央の点線は閾値3.25を示しており、これより左では表示される星が3.0となり、これより右では星が3.5となっています。そして縦軸の予約可能確率を見ると、閾値のすぐ左側では約90%ですが、すぐ右側では50~70%に低下しています。
「予約可能確率が低い」ということは、それだけ予約が多く入っていることを意味しています。つまり、表示される星が3.0から3.5に上がるだけで、ピークタイムの予約が大きく増加しているのです。
さらに研究では、星の効果がどのような状況で強く現れるのかも検証されています。まず、レビュー数で店舗を分けてRDDを実施したところ、レビュー数が多い店舗では星の影響はほとんど見られませんでした。一方で、レビュー数が少ない店舗では、表示される星が増えると明確に予約が増加していました。
『原因と結果を武器にする思考』(安井翔太、伊藤寛武、金子雄祐、日経BP 日本経済新聞出版)
そして、ミシュランの星を獲得した店舗や、地元有力紙の年間レストランランキングに選出された店舗、つまりYelp以外の情報源で品質がすでに広く知られている店舗のみで行った分析では、星の影響は確認されませんでした。
これらの結果は、消費者が店舗の質について十分な情報を持たないとき、表示される星が意思決定を左右する重要な情報となっていることを表しています。逆に言えば、他の情報が豊富な場合には、星の影響は弱まるのです。
この事例が示しているのは、RDDが単に効果の有無を推定するだけでなく、データを分割することで効果の異質性まで明らかにできるという点です。
仮説を持ち、その仮説に沿ってサンプルを分ける。そのうえで閾値の付近を観察する。そうすることで、「なぜ効果が生まれるのか」というメカニズムにまで踏み込むことができます。






