日産自動車の株主総会に出席したカルロス・ゴーン会長(右)と西川広人社長=2018年6月26日、横浜市西区[同社提供] 写真:時事通信フォト
カルロス・ゴーン元会長の不正報告を受けてから、逮捕に至るまでの約1カ月間、日産の社内では、水面下の攻防が繰り広げられていた。ルノーとの関係悪化や社内の摩擦――さまざまなリスクを抱える中、東京地検特捜部の捜査が進む間も、ゴーン氏に察知されないよう「毎週の報告メール」を送り続ける必要があったという。逮捕直前、北アフリカ・モロッコでゴーン氏と2人きりで対峙した日産元社長・西川廣人氏。経営統合を迫るゴーン氏に、日産の独自性を守るために突きつけた言葉とは? その舞台裏に迫る。※本稿は、西川廣人『わたしと日産 巨大自動車産業の光と影』(講談社)の一部を抜粋・編集したものです。
逮捕までのメール
→『 「社長を含めて誰にも話すな」ゴーン逮捕直前の検察の極秘捜査、日産社内の混乱と協力体制を西川元社長が語る 』を読む
ゴーンの不正そのものだけでなく、ほかにも大きな懸念があった。当時は会長のゴーンからアライアンス優先の強引な指示が矢継ぎ早に飛んできていた時期だ。日産は何事もルノーと相談しなければ動けないという状態に陥り、ルノーとの連携に積極的にかかわってきた中堅リーダー層にまで反発が広がり始めていた。
そんな中で会長の不正が摘発されれば、ゴーン体制下で推進された「内なる国際化」(国籍、出自などにかかわらず、有能な人材が活躍できる体制)のあおりを受け、社内に漂っていた「日本人だけで日産をコントロールできなくなったこと」に対する不満の声が大きくなり、ひいては社内における日本人と欧米人の間の摩擦、ルノーとのアライアンスへの反発が強くなると懸念されたのである。
同時にルノー側でも、会長の不正発覚という衝撃的な事態に対する戸惑いが、日産に対する疑念にすり替わる恐れがあった。
「日産社内の日本人には、ルノーとの統合を嫌がり、アライアンスや協業の深化に反発する勢力がいる。彼らによる意図的なゴーン攻撃、ゴーンはずしがあったのではないか……」
ルノーの首脳がそんな疑心暗鬼に陥る危険性があったのだ。
これらのリスクを回避し、日産社内の混乱を収め、ルノーとの関係悪化を避けなければならない。そのためには、やはり不正は不正として厳正に対処し、経営や事業上の問題、ルノーとの提携の在り方に対する不安や不満などの問題とはっきり区別して臨む必要があった。







