Photo by Frederic PITCHAL/Gamma-Rapho via Getty Images
トヨタ関係者からも日産のクルマづくりは「世界トップ水準」と絶賛されている。日産は高い技術力を誇りながらも「売れ筋」を欠き、気付けば7工場閉鎖という深刻な経営危機にまで追い込まれてしまった。本稿では、顧客を置き去りにした競合ありきの開発の末路と、日産崩壊の真因を元トヨタ幹部らの証言を交えて解き明かす。 ※本稿は、近岡 裕『日産 最後のサバイバルプラン 転落の真因と復活への提言』(日経BP)の一部を抜粋・編集したものです。
「技術だけでは売れない」
→『「危機の日産」と「好調トヨタ」2010年代の選択の決定的な違い』を読む
トヨタ自動車の関係者の多くは「日産の技術力は高い」と評価する。中でも、高品質でばらつきの小さいクルマを、決められたコストで計画通り量産するという点においては、世界の自動車メーカーの中でもトップ水準に位置する。実際、日産自動車のクルマづくりの完成度は極めて高い。昔から日産自動車は「技術の日産」を標榜してきたが、その看板に偽りなしというわけである。
ところが、同時にトヨタ自動車からは「技術だけでは売れない」という声も聞こえてくる。もちろん、トヨタ自動車でも様々な新技術を開発する。だが、それらの技術を織り込んだクルマが世界で売れるとは限らないという指摘だ。
「世界の各地域によって顧客のニーズは異なっているため、欲しいと思われる車種と、要らないと思われる車種は地域によって違う。従って、そうした地域ごとの詳細なニーズを踏まえたグローバルな営業戦略をしっかりと立てた上で開発しないと、クルマは売れない。技術があれば売れると考えているとしたら、大間違いだ」
トヨタ自動車出身で、現在は様々な企業の顧問を務めるTouson自動車戦略研究所代表の藤村俊夫氏はこう指摘する。
トヨタ自動車の開発は、モジュラー設計である「トヨタ・ニュー・グローバル・アーキテクチャー(TNGA)」を基に進められている。このTNGAでは、複数のセグメントをまたいで共通化する部分において、走行性能や視認性といったクルマの基本的な機能・性能を引き上げる。
一方で、それ以外の非共通部分を柔軟に変えられるようにしておき、ここに「地域によって『味付け』を変えた技術を盛り込む」(トヨタ自動車)という発想だ。これにより、同社はグローバルな営業戦略を立てられるようにしている。大胆な部品の共通化でコストを抑えつつ、世界の幅広い地域の顧客ニーズに応えられるクルマづくりを展開しているのである。







