2024~2025年にかけて急激に上昇して注目を集めた金(ゴールド)ですが、ポートフォリオに入れるか迷う人も多いはず。ブルーモ証券CEOの中村仁氏の著作『AIバブル後の投資戦略』より、まさに「金はどこまでポートフォリオに入れるべきか?」をまとめたコラムを紹介します。
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金は、株式や債券のように配当や利息を生む資産ではない。それでも、何千年ものあいだ価値保存の手段として使われてきた。理由は単純で、発行者がいないからである。株式には企業、債券には政府や企業、預金には銀行という「相手方」がある。しかし金そのものには倒産もデフォルトもない。インフレ、戦争、通貨不安、金融危機の局面で金が買われやすいのは、この性質による。
ただし、金は万能ではない。長期チャートを見ると、金には大きな上昇相場と長い下落相場が何度もある。1971年にブレトンウッズ体制が崩れ、金とドルの固定関係が終わると、金は1974年まで急騰した。その後、1974年から1976年にかけて約43%下落し、さらに1976年から1980年には再び大幅上昇、1980年から1982年には約52%下落した。1987年から1999年には約48%下落し、この時期は中央銀行の売却、米国株式の強い上昇、インフレ低下が重なった。反対に、1999年から2011年までは金の長い強気相場となり、612%上昇した後、2011年から2015年には約42%下落した。つまり金は「安全資産」ではあるが、「価格が下がらない資産」ではない。
では、金はポートフォリオにどれくらい入れるべきなのか。代表的な考え方はいくつかある。まず、伝統的な株式・債券中心の運用では、金を入れない、あるいはごく少量にとどめる考え方がある。金は利息を生まないため、株式や債券が好調な時期には機会損失になりやすいからだ。
一方、分散投資の観点では「2~10%」という説がよく見られる。World Gold Councilは、バランスの取れたポートフォリオにおいて5%程度の戦略的配分が有効で、目的に応じて2~10%の範囲が考えられるとしている。日本の投資家についても、円建ての金は長期的なリターン、株式との低い相関、インフレヘッジの観点から一定の役割を持つとされる。
さらに強気な説としては、10~15%を推奨する考え方がある。これは、政府債務の拡大、通貨価値の低下、地政学リスクの高まりを重視する立場だ。レイ・ダリオも、米国の財政リスクや市場不安への備えとして、分散ポートフォリオに10~15%の金を持つ考えを示している。
さらに極端な例が、ハリー・ブラウンの「永久ポートフォリオ」という考え方である。これは株式25%、長期国債25%、短期国債または現金25%、金25%という配分で、繁栄、景気後退、デフレ、インフレのどれが来ても耐えられることを狙う設計である。ただし、これは通常の資産運用に金を少し足すという発想ではなく、ポートフォリオ全体を守りに振り切る思想である。一般的な投資家がそのまま採用するには、株式上昇局面での出遅れを受け入れる覚悟が必要だ。
近年、金の役割は少し変わりつつある。従来の分散投資では、株式が下がると債券が上がり、債券がクッションになるという前提があった。しかし、インフレが高止まりし、金利も上がる局面では、株式と債券が同時に下がることがある。このとき、第三の分散先として金の存在感が増す。実際、株式と債券の相関が高まる環境では、従来より大きな金配分が必要になる可能性があるとする分析もある。
結論として、金は「儲けるための主役」ではなく、「壊れた相関への保険」と考えるべきだ。基本配分は3~5%、不安定な市場環境では5~10%、通貨不安やインフレリスクを強く意識するなら10~15%までが現実的な目安になる。一方、25%は専用の守備型戦略と考えたほうがよい。







