2万人をみてきた組織開発コンサルタントで『組織の違和感』の著者である勅使川原真衣氏が、実際に職場に分け入って考えた、組織変革のコツを伝えます。(構成/ダイヤモンド社書籍編集局)
受け取る側の負担
人としては嫌いではない。むしろ、いい人だと思っている。
言葉遣いは丁寧で、気遣いもある。連絡もまめで、説明もきちんとしている。
失礼なことを言うわけでもない。
それなのに、一緒に仕事をすると、なぜか疲れる。
そんな相手はいないでしょうか。
つまり、「いい人」であることが疲れにつながる場合です。
たとえば、こちらは要点だけ知りたいのに、前提から順に丁寧に説明してくれるとき。「そこまでしなくて大丈夫ですよ」と言っても、「念のため」と、さらに情報を足してくる場合。
相手のためを思ってやってくれていることでも、受け取る側には「情報が多すぎる」「そこまで気を遣われると、こちらもきちんと返さなければならない」と負担になることがあります。
「丁寧」は相手によって意味が変わる
ここで注目したいのが、「丁寧な人=相手をよく見ている人」とは限らないということです。
丁寧さには、その人なりの「こうするのが親切だ」「ここまで説明するのが誠実だ」という型があります。
そして、その型を誰に対しても同じように使っているとしたら、それは相手を見ているというより、自分のやり方を相手に当てはめているだけかもしれません。
本当に相手を見るというのは、「自分ならここまで説明してもらえるとうれしい」ではなく、「この人は、どこまでの説明を必要としているだろう」と考えることです。
これは、意外と難しいことです。
丁寧な人ほど、「雑に見られたくない」「失礼があってはいけない」と考えます。そのため、説明を削るより足す方向に動きやすい。
でも、相手によっては、その丁寧さが「重い」と感じることもあります。
つまり、「親切」「丁寧」「気遣い」は、相手によって意味が変わるのです。
関わり方を調整する
複数の人が所属する組織では、人の性格そのものより、人と人との「組み合わせ」を見ることが大切です。
一方的に相手を責めるだけでは物事は好転しませんし、同時に、「こんなにいい人なのに疲れる自分は心が狭い」と、自分を責める必要もありません。
見るべきなのは、どこで噛み合っていないのかです。
情報量が少ないほうが動きやすいのか、情報を多く渡すことで安心するのか。
任されたら自由に進めたいのか、それとも途中経過が見えないと不安になるのか。
そこがわかれば、関わり方は調整できます。
「結論だけ先にもらえると助かります」
「途中経過は週に一度で大丈夫です」
「急ぎでなければ、まとめて送ってもらえるとうれしいです」
そんな小さなやりとりで、関係がずっと楽になることがあります。
大切なのは、「いい人だから我慢する」ことではありません。
そして、「自分はこんなに丁寧にしているのだから、相手も喜ぶはず」と思わないことです。
相手を思うことと、相手に合った関わり方をすることは、同じではありません。
性格の部分は否定せず、関わり方を調整する。
その視点を持てると、「好きか嫌いか」という人間関係の悩みではなく、「どう組み合わせれば働きやすくなるか」という組織の課題に変わります。
忙しいリーダーに、効果のあることだけ

「好き嫌い」や「やる気」、
「あうんの呼吸」に頼らず
組織を機能させるための具体策!
対話より先に、やるべきことがある。
「大丈夫です」のひとことでモヤッとしたとき、
待ちの姿勢ばかりの部下に自走してもらうにはどうしたらいいのか、
スタンドプレーが多い部下に「チームで仕事をしよう」と伝えるための効果的な伝え方は?……
ビジネスの現場に尽きないコミュニケーションの悩みを、「マネジメント」のスキルとして、「3段階」に分けて打ち手を授けるのが本書です。
まずは土台となる「観察」のスキルを紹介。ここでは、違和感に着目するというユニークな手法をとります。
そして、「自分を知る」「相手を知る」「組み合わせる」の3段階で、関係性から組織の最適解を導き出します。
自分と相手の「持ち味」を知り、
組織をつなぎ直すための一手を
この3段階を経て、違和感を乗り越えるための伝え方や振る舞い方を具体例とともに紹介します。
スキルといっても、難しいものではありません。「あれ、今なんか変だったな」という気づきを、手がかりにつかむこと。
さらに本書では、「持ち味」を知るためのいくつかの診断も掲載。すぐにチームに実装できるような作りにしています。
事前に特別な準備や学習はまったく不要。やるべきことが明確になり、現場のもやもやがクリアになります。
いつでも「今ここ」での気づきから組織を改善できる。行き詰まった状態を打開する新鮮な方策が詰まった、忙しいリーダーの支えになる一冊です。

本書の内容
はじめに
ギリギリな組織の頼みの綱は
人それぞれが「正しさ」を生きている
「持ち味」の組み合わせと「解釈」のクセ
第1章 違和感とは何か? ―― 「決めつけ」が横行する現場で
観察の達人!? コナンくん
仕事に本音はいらない
「なんか変な感じ……」の正体
人はみな「違う色のメガネ」をかけている
「職場のすれ違い」は決めつけから生まれる
とにかくみんな疲れている
すべてのコミュニケーションの基本となる「観察」の3ステップ
第2章 「自分を知る」 ―― 違和感に気づくと「自分」がわかる
自分の本音がわからない
変えられない性質は確かにある
手がかりは「どうしてもとりつくろえない瞬間」
「わかってほしかった」は「解釈のクセ」が生み出している
「自分が知らない自分」はスマホが教えてくれる
第3章 次に、「相手を知る」 ―― 人間関係の違和感から「相性」を知る
「伝える」の前に「見る」がある
「言わなくてもわかるでしょ」はマネジメントの怠慢
相手の何を「見る」のか? ―― ソーシャルスタイルの4類型
「他者の合理性」を知るヒント
「人それぞれ」では話が進まない
第4章 そのうえで、「組み合わせる」 ―― 違和感を役立て最高の組織をつくる
「今いるメンバー」で最高のチームをつくる
「好き嫌い」より「相性」を考える
それは「評価」ではなく「評判」です
「自分でやったほうが早い病」への処方せん
「似た者同士」がうまくいくとは限らない
職場は「ドレッシング状態」にならなくていい
個人と組織のサンドイッチ作戦
第5章 違和感を乗り越えるための話し方・振る舞い方
役割の実行を後押しする「面談」「相談」「雑談」「対話」
「大丈夫です」の複雑さ
「よかれと思って」が残念なワケ
待ちの姿勢ばかりの部下に「自走してほしい」と伝えたい
スタンドプレーが多い部下に「チームで仕事をしよう」と伝えたい
コミュ力が高い人の「真の使命」は、相手に合った手段を選ぶこと
危うい場面で役に立つ「否定しない技術」
会議時間を短縮すれば「生産性」が高まるのか?
「困っている人」は「決めつけていない人」
第6章 「いてくれてありがとね」から始める組織改革
「いい人材がいない」と嘆く人は組織の価値を見落としている
「重すぎない信頼関係」のススメ
「健全に疑う」のススメ
100点を取ってきた子どもに「偉いね」と言ってはいけない理由
100%わかり合うことは無理、それでも「訂正」し合うことはできる
「自分のまま働く」ために
解説 ―― 坂井風太