相手を「飛び級」させると
拒絶のバリアが生まれる

 どんな段階の人に対しても、指導者の介入の目的は相手の段階を上げることです。相手を上の段階へ引き上げる際、守るべき鉄則が2つあります。それは、

・相手の段階を見極め、その段階に合った介入をすること
・一気に2段飛ばそうとせず、「1段上」だけを目指す(飛び級厳禁)

 です。たとえば『関心(本気で考えていない)』段階の人の場合、次の段階は『準備(やる気になっている)』ですが、そのもう1つ上の『実行(すでに行動している)』へいきなり引っ張り上げるような「飛び級」をさせてしまうと、相手は「拒絶」というバリアを張ります。こうなると、何を言っても届かなくなります。多くの現場で起こる「言うことを聞かない」の正体は、この飛び級による拒絶なのです。

 行動が変わるのは本人が「変わりたい!」と強く思ったときだけです。大切なのは、本人が「このままではいけない」と自覚すること。「〇〇した方がいいですよ」というアドバイスだけでは、人は動きません。

 相手を次の段階へ導きたいなら、「本人がその気になるよう導くこと」に全力を注ぐべきです。

筋トレに興味を示さない
50代女性をどう動かすか?

 私がフィットネスクラブのインストラクターをしていた頃、こんな実験的な試みをしたことがあります。

 お客様のBさん(50代女性)は、エアロビクスダンスのレッスンには熱心ですが、筋トレには一切興味がありませんでした。機材が並ぶジムエリアは眼中になく、私が「筋トレはされないのですか?」と尋ねても、「はぁ?(何言ってるの?)」という反応でした。まさに『無関心』の状態です。私は「この方を『維持』の段階まで連れて行こう」と策を練りました。

 Bさんが大好きな人気インストラクター・C君がいることに着目しました。あるとき、レッスンに間に合わなかったBさんがスタジオの外から彼を眺めていたので、作戦を開始しました。私はBさんに話しかけました。

「C君、カッコいいですよね。あのキレのある動き、実はすごい体幹の強さが必要なんです。彼は日頃から筋トレを頑張っているから、あんな動きができるんですよ」