会うたびにこの話を繰り返しました。ポイントは、筋トレそのものではなく、彼女の興味(C君)と筋トレをリンクさせることです。「あなたもやった方がいいですよ」とは決して言わず、ただただ関心を持ってもらうことに専念しました。

 するとある日、Bさんが「筋トレって、やった方がいいんですか?」と聞いてきました。「よし、来た!」と心の中でガッツポーズです。これで第2段階『関心』への引き上げに成功しました。

 数日後、Bさんがおずおずとトレーニングルームを覗いているのを見かけました。筋トレにまったく興味がなかったのに、自らトレーニングルームに足を運んでいるのです。

細かい指導は後回しにして
まずは本人にその気になってもらう

『関心』段階に上がったので、ここからは『準備』段階へ移るチャンスです。私は「ちょっとやってみませんか?」と誘い、トレーニングマシンを使ってみてもらいました。正しい使い方などは言わず、ただやってみてもらうのです。自分がどれだけ筋力がないかを知ってもらうことが狙いです。

 Bさんは軽い重量でもまったく上げられませんでした。それなのに隣では、いつものエアロビクス仲間が楽々と重いものを上げている。Bさんはショックを受け、「自分もやった方がいいみたい」と痛感しました。自分事になったので、これで第3段階『準備』です。

 私は細かいフォーム指導は後回しにし、とにかく「楽しい体験」と「次の約束」を繰り返しました。しばらくこれを続けるうちに、ついにBさんは1人でジムに来て筋トレを始めるようになったのです。

「ついに『実行』に来たか!」

『一流を支えるトレーナーの最強の教え方』書影『一流を支えるトレーナーの最強の教え方』(清水 忍、幻冬舎)

 ここで初めて、私は具体的なフォームや重量の設定など、プロとしての理論を伝えていきました。ここまで3カ月くらいかかりましたが、まったく興味のなかった人が、自ら筋トレをするまでにいたったのです。

 結果、Bさんは数カ月後にはエアロビクスよりも筋トレに夢中になるほどの大成功を収めました。

 もし私が最初から「筋トレも大事ですよ、まずはスクワットのフォームから教えますね」なんて指導をしていたら、Bさんは私の顔を見るたびに逃げ出していたでしょう。

「やった方がいいですよ」と言わずに、その気にさせる。本人に自覚させて継続させる。この流れを作ることこそが、指導者に求められる技量なのです。