ビジネスの世界では「話し方」一つで大成功を手にすることもあれば、大損失を被ることもあります。ただし、口がうまいからと言って仕事ができるわけではなく、むしろ口下手の方が結果を出すケースも少なくありません。ビジネスで求められる実践的「話し方」とは?この特集ではあなたの「話し方」を劇的にアップデートする書籍を厳選しました。今回は『部下のやる気を引き出す上司のちょっとした言い回し』の中から、チームのパフォーマンスを上げるための効果的な褒め方をお届けします。(ダイヤモンド編集部編集委員 藤田章夫)
部下のプライドをくすぐる
上手な褒め方とは?
「褒められて嫌な人はいないのよ」
1999年にダイヤモンド社に中途入社し、2006年に週刊ダイヤモンド編集部(現ダイヤモンド編集部)に異動するまで営業部門に在籍していましたが、その当時とてもお世話になった上司が話しくれた印象的な言葉のうちの一つです。
実際、この上司はよく褒めてくれましたので、気持ちよく仕事することができました。そしてこの上司のすごいところは、自分の上司であっても上手に褒めることです。
相手が目上の人だとついついおべっかを使ったり、媚を売ったりしがちですが、たいていばれています(それでも無邪気に喜ぶ上司もいますが……)。ですが、この元上司は、誰もが納得するような事例を交えることで上司を上手に褒めて、仕事をスムーズに進めていました。
とはいえ、人を上手にほめることは簡単なことではありません。むしろ部下などに対しては、褒めるどころか、気が利かないことにイライラして、ついつい厳しく当たってしまうことも多いのではないでしょうか。それではチームのパフォーマンスは上がりません。
「部下をうまく褒めてチームの成績を上げたいけれど、どうすればいいか分からない……」。そうした悩みに答えてくれるのが、コミュニケーションデザイナーの吉田幸弘氏の著書、『部下のやる気を引き出す上司のちょっとした言い回し』の第3章「部下のプライドをくすぐる上手な褒め方」です。
<どんな相手でも受け入れてくれる褒め言葉>
× →「伊藤さんは、プレゼンが上手ですね」
○ →「どうしたら伊藤さんのようなプレゼン資料がつくれるのか、教えてもらえますか」
直接な言葉で褒めても、照れたりして素直に受け止めてくれるとは限りません。そこで、「プレゼン資料作りがうまい」という前提に立って、質問しながら褒めるという話法が有効です。
<「トライアングル褒め」で信憑性がさらに増す>
○ →「伊藤くんが、君には安心して事務処理を任せられると言っていたよ」
これは、第三者を使って間接的に部下を褒める方法です。第三者が褒めていたと伝えられると嬉しいものですし、信憑性があって、お世辞のように感じないという特徴があります。また、第三者が褒めていることに同意しているわけですから、同時に二人に褒められていることにもなります。
加えて、その場にいない人のことを第三者の前で褒めるのも効果的です。間接的に本人に伝わるとモチベーションが上がりますし、褒める対象がその場にいないので照れくさくなく、褒めるのが苦手な人にも使いやすいでしょう。こうした「トライアングル褒め」を意識的に使えると効果的です。
<「つぶやき褒め」をしよう>
× →「でも」「ていうか」「だけどさあ」
○ →「さすが」「すごい」「知らなかった」「せっかくだから教えて」「そうくるか」
一見わざとらしく聞こえてしまいますが、いい報告があった際にすかさず、「さすが」「すごい」などの「つぶやき褒め」を使うと効果的です。また、会議などで若手メンバーが未熟な意見を言ったとしても、「でも」「ていうか」などの否定ワードを使うのではなく、まずは受け止めた上で、その後に意見を言うようにしたいですね。
このように少し意識するだけで、比較的容易に褒めることができるようになります。そして、褒める際にはできるだけ他の人の前で褒めるとさらに効果的。褒められるのが嫌な人はいません。部下だけでなく、対上司にも有効なフレーズが満載の本書をぜひ、ご一読ください。
『部下のやる気を引き出す上司のちょっとした言い回し』の本文はこちら
第1章 部下が話しやすくなる相槌の打ち方/第2章 部下の言いたいことを上手に引き出す聞き方
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