甲子園では155キロを投げていたのに、プロ入り後は140キロ前後まで低下。期待のルーキー菊池雄星は、原因不明の不調に苦しんでいた。そんな19歳に、パーソナルトレーナーが最初に教えたのは特別なトレーニングではなく、「なぜやるのか」を理解することだった。※本稿は、清水 忍『一流を支えるトレーナーの最強の教え方』(幻冬舎)の一部を抜粋・編集したものです。
練習の意図まで理解してこそ
パフォーマンスは向上する
清水忍氏と菊池雄星選手(写真は著者提供)
「教える力」のある人は、相手を納得させながら教えます。理由がわかれば習得が早くなることを知っているからです。
実はトップアスリートでさえ、「なぜその練習をするのか」を理解せずに励んでいるケースがあります。野球のバッティングコーチに「骨盤を速く回せ」と言われて、頑張って骨盤を回す練習をしている選手がいました。私が選手に「なぜその練習をするの?」と尋ねると、「もっと強くバットが振れるから」といった答えが返ってきます。
しかし、それは答えになっていません。私が聞きたいのは、「なぜ骨盤が速く回るとバットが強く振れるのか」という原理です。その意義がわからないまま練習していると、解釈が少しずつズレ、パフォーマンスにつながらない「ただの動き」になってしまいます。
そんなとき、私はこう伝えます。「今の骨盤の回し方だと、骨盤は速く回っているけれどエネルギーが上半身に伝わっていないから、バットは強くは振れないよ。回転エネルギーを手先まで伝える方法を考えながら練習してみよう」
すると選手は初めて腑に落ちた顔をします。本来の目的はバットを強く振ることなのに、骨盤を回す方に意識が向いてしまい、本質を見失っているのです。その後の練習では目的意識が変わるため取り組みも変化し、動きが格段に良くなることが少なくありません。
練習内容が間違っていなくても、その動きをする意味を理解していなければ効果は半減します。練習やトレーニングの意義を説明することは、指導者の義務であると私は考えます。
「スクワット=下半身強化」の
固定観念を揺さぶってみる
ここで、具体的な例を挙げましょう。アスリートなら誰もが行う「スクワット」にまつわるお話です。
あるトップアスリートの野球選手とのエピソードがあります。
当時19歳だった彼は、年齢からは考えられない高重量でスクワットを行っていました。そのパワーには驚きましたが、フォームに違和感を覚えました。彼の意識が「重いバーベルを持ち上げること」に終始しているように見えたのです。
そこで「なぜスクワットをするの?」と聞くと「下半身を強化するためです」と言い、「なぜ下半身を強化したいの?」と聞くと「速い球を投げたいからです」と答えます。さらに私が「じゃあ、下半身を強化すると、なぜ速い球が投げられるのか教えて」と追い打ちをかけたら、もう答えられませんでした。19歳の彼は、スクワットを行う本当の意味をまだ理解できていなかったのです。







