「子どもに英語を身につけてほしい」と考えたとき、英会話教室に通わせたり、英語の動画を見せたり、単語を覚えさせたりすることを思い浮かべる人は多いのではないだろうか。しかし、外国語を習得する力には、英語の勉強とは一見関係なさそうな「ある習慣」がかかわっていることが、研究からわかってきている。しかも、その習慣は記憶力や集中力など、子どものさまざまな力にも関係するという。いったい、どんな習慣なのか。『医師が教える 子どもの習慣50の基本』から一部抜粋してお届けする。(ダイヤモンド社書籍編集局)
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「運動習慣」はとても大切
私たち人間は「動物」の仲間、動く生き物です。英語に move or die という表現があります。これは「動かないと死んじゃうよ」という意味です。
当クリニックにいらっしゃるお子さん(親御さんも)のなかで、体を動かすのがおっくう、面倒くさい、できればずっと寝っ転がってスマホを見ていたいという子がいます。その子たち(と親たち)に、私は「動かないと死んじゃうよ」と脅します。動かないといろいろな病気になりやすいですし、肥満や便秘、朝が苦手といった困りごとや悩みごとが改善しないどころか悪化します。
2024年、「JAMA」という権威ある医学誌で発表された研究論文には1週間に150分(1日に約20分)の運動習慣があると、元気に天寿を全うできると書かれています(19)。同じ年に発表された別の論文でも、肥満、高血圧、喫煙、飲酒などの健康を損なうリスクがあっても、運動することの健康メリットは大きいと示しています(20)。
運動習慣は、健康が気になりだす35歳ごろになってから急につくものではありません。子どものころから運動する習慣をつけておくことが何より大事です。
実際、赤ちゃんのときから動くことが必要です。うつぶせで毎日のべ3時間くらい過ごすことで、脳が発達します。
脳は、胎児のときに一番発達しますが、その次は最初の1,000日、0歳から3~4歳ごろまでといわれています。最も神経が発達するのは5歳くらいまでです。でも安心してください。脳はその後もたえず発達します。
運動すると問題を解決できる力もつく!
運動することで子どもの脳が育ち、
●脳機能
●学習能力
●情緒・メンタル
の発達につながります(21)。
また、脳の高次機能が上がることも報告されています。高次機能とは、判断力などを指します。子どもの頃、あるいは思春期には高いところから無鉄砲に飛び降りるなどの危険行動をしがちですが、運動によって判断力が養われて危険行動リスクが下がると結論づけている研究もあります。
また、運動する子どもには集中力があり、計画性も見られます。
中国の9~10歳の子どもたちを対象にした研究で、週に4回、柔軟運動、50mダッシュ、なわとび1分間、腹筋などの「構造化した運動」(手順や回数が決まった運動)を楽しく行うことで、記憶力と気分を評価する心理テストの結果が改善したという報告が2025年6月に出ています(22)。
運動すると、外国語を獲得する力も高くなる
3~5歳の子どもにおいても、運動する子のほうがワーキングメモリが高いことが示されています。ワーキングメモリは、さまざまな情報を脳の片隅に一時的に保持する力なので、高いとそれだけ多くの情報を用いて問題解決ができます。さらに、母国語の語彙力と外国語を獲得する力が高いことを示す研究もあります。
運動することでBDNF(Brain Derived Neurotrophic Factor、脳由来神経栄養因子)が増えることもわかっています(23)。BDNFとは脳のニューロンを伸ばし育てる物質のことです。BDNFが増えると神経が伸びて神経同士がつながります。つまり、BDNFは記憶と学習には必須で、集中力、問題解決能力も発達させます。
複数の研究から、おすすめの運動は次のようなものです。
●有酸素運動:ジョギング、ダンス、スキップ、自転車、体操
●筋肉運動:腹筋、腕立て、抵抗バンドを使った運動(24)
抵抗バンドとは伸びるベルトのことです。時々、健康系の雑誌の付録としても見かけますよ。
ぜひ、お子さんに運動習慣がつくよう、いろんな工夫をしてみてくださいね。
20 Jakicic JM. Physical activity and reduced mortality regardless of age-Considerations for public health. JAMA Netw Open. 2024;7(11):e2446811. doi: 10.1001/jamanetworkopen.2024.46811.
21 Khanjari Y. The role of physical activity in children’s brain development and learning: A systematic review. Brain Neurol Disord. 2024;7(4). doi: 10.31579/2642-973X/106.
22 Wang S, Liu J. Comparing the effects of physical activity and cognitive training on cognitive performance, physical fitness, and mental health in 9- to 10-year-old children: A randomized clinical trial. Front Psychol. 2025;16:1555451. doi: 10.3389/fpsyg.2025.1555451.
23 Rico-González M, González-Devesa D, Gómez-Carmona CD, Moreno-Villanueva A. Exercise as modulator of brain-derived neurotrophic factor (BDNF) in children: A systematic review of randomized controlled trials. Life (Basel). 2025;15(7):1147. doi: 10.3390/life15071147.
24 Children’s Hospital of Philadelphia Study Links Smartphone Ownership in Childhood to Increased Risk of Depression and Obesity in Youth. [cited 2026 Jul 31]. Available from: https://www.chop.edu/news/childrens-hospital-philadelphia-study-links-smartphone-ownership-childhood-increased-risk
赤坂ファミリークリニック院長/小児科医/MD, MPH/BCIA認定ニューロフィードバック認定医
NPO法人Healthy Children, Healthy Lives代表理事。
東京外国語大学卒、帝京大学医学部卒、東京大学大学院医学系研究科修了。
医師になる前から同時通訳者として天皇陛下や歴代首相、米国大統領の通訳を務め、現在も医学系会議を中心に活動している。通訳の仕事をしながら2児をもうけたあと、40歳で医学部を受験し、医師に。卓越した英語力を武器に、海外の学術論文から日々最新の情報をアップデートしている。メディア出演も多く、わかりやすい説明と親しみやすい人柄で子どもはもちろん、その親からの信頼も厚い。著書に『医師が教える 子どもの食事 50の基本』(ダイヤモンド社)などがある。






