子どものころから身についた生活習慣は、大人になってからの健康にも影響する。だからこそ、できるだけ早いうちに整えておきたいものだ。じつは、何気なく続けている習慣のなかには、将来の健康だけでなく「寿命」にまでかかわる可能性が指摘されているものがある。ある研究では、死亡リスクが約10%高くなるという結果も報告されている。いったい、どんな習慣なのか。『医師が教える 子どもの習慣50の基本』から一部抜粋してお届けする。(ダイヤモンド社 書籍編集局)

【小児科医が解説】死亡リスクが10%上がる「子ども時代からの習慣」ワースト1Photo: Adobe Stock

夜型人間は死亡リスクが上がる?

 私たちの体には体内時計が備わっています。もう少し詳しく説明すると、脳には「本部・中枢」、体の細胞には「支部・末梢(まっしょう)」という時計遺伝子があります。

 時計遺伝子は、一連の複数の遺伝子群で、私たちの睡眠・覚醒(かくせい)・ホルモン分泌・代謝などのリズムをコントロールするものです。時計遺伝子は1日のなかで細胞がたんぱく質を作るとき、壊すとき、ホルモンを分泌するときなどに協力し合って働けるよう、体内の時間を合わせる仕事をしています。

 今から30年ほど前に発見されましたが(1)、その後も新事実が次々とわかり、時計遺伝子は私たちの寿命にも関係することが明らかになっています。このような研究成果によって、「何時に起きて何時に食事をするか」は、健康に生きるためにとても大事なことだと改めてわかってきています。

 体内時計は約24時間の周期になっていて、これを概日(がいじつ)リズムと呼びます。それに合わせて、起床する少し前からストレスホルモンが準備モードになったり、空腹ホルモン・満腹ホルモンの分泌が1日のなかで変化したりします。

 ヒトは日中に活動をして夜間は寝るように脳と体がプログラミングされています「夜型人間」は、そうでない人に比べて死亡率が約10%高いという研究があるんです(類似研究複数(2))。

 ですから、昼夜逆転のような生活習慣は健康にとても悪いと言えるでしょう。

起床時間を決めると頭がよくなる?

 朝起きる時間はできるだけ同じほうがよいでしょう。起床時間によって1日のリズム(概日リズム)が決まり、ホルモンなどいろいろな物質が体内で作られ分泌されるリズムが決まり、脳の働きが決まり、体の動き方も決まります。前後30分程度のズレなら影響はありません。

 もし、旅行や特別な行事、あるいは大人の都合などでリズムが大幅にズレてしまった場合は、がんばってもとに戻しましょう。直すには、起きたら朝日を浴びる、朝・昼・夜のごはんを時間どおりに摂る、日中にきちんと活動する(眠いからといってゴロゴロしない)、適切な時間に就寝するというふつうの生活を送ることが大切です。

 とくに子どもは朝、一定の時間に起きると1日を通じて体と脳、情緒の働きが安定することが示されています(3)。

 日本の約4,900人以上の保育園児の睡眠覚醒を調べた研究でも、週末を含めて、一定の時間に起きるほうがよさそうだと結論づけています。小学生までは10時間以上の睡眠が望ましいとされていて、そのためには朝6時半に起床するなら、夜は20時半までに就寝するのが目安になります。

 睡眠時間が短いと自分と社会のリズムがズレて、日中のパフォーマンスが下がりますし(頭が働かないので授業に集中できない、気分が優れないので友だちとケンカしてしまうなど)、免疫力も落ちます。

食事の時間も同じがいい?

 食事の時間を同じにすることも大切です。数百兆と存在する腸内細菌たちは生き物。彼らは「そろそろ栄養素が入ってくるぞ」と事前に感知して、準備をします。そして代謝の過程で私たちヒトにとってよい代謝物質を分泌し、それらの分泌物が私たちの脳の活動や情緒に影響を与えています(4)。

 ですから食事の時間がズレると、腸内細菌たちはとまどってしまうのです。毎日、なるべく同じ時間に食事ができると、腸内細菌たちも安心して活動できます。

毎日同じ時間だと飽きない?

 毎日同じ時間に起き、同じ時間に食事を摂ることは、1日の見通しがわかる、1日の予測がつくということ。それが心身の安定につながり、安心して学習に取り組める基盤になります。

 逆にいえば、日々、予測不能な生活をしていると、概日リズムが崩れ、ホルモンの分泌が乱れ、心身の安定が望めず、安心して学習ができません。

 毎日同じリズムだと単調になってしまうのでは? と思うかもしれませんが、遊びや学びは脳にとっての「刺激」。予測できる流れとは、まったく刺激がない単調な日々ではないのです。

 散歩や学校での勉強、友だちとの会話で得られる知的な刺激が、子どもたちの学習となります。その効果を最大限に高めるために、朝、同じ時間に起き、同じ時間に食事をし、そしてお風呂に入って寝る時間も同じというように過ごすのがよいのです。

1 NeuroVoices: Joseph S. Takahashi, PhD, on the Circadian Clock’s Impact on Metabolism, Aging and Lifespan. [cited 2026 Jul 31]. Available from: https://www.neurologylive.com/view/neurovoices-joseph-takahashi-circadian-clock-impact-metabolism-aging-lifespan

2 Knutson KL, von Schantz M. Associations between chronotype, morbidity and mortality in the UK Biobank cohort. Chronobiol Int. 2018;35(8):1045-1053. doi: 10.1080/07420528.2018.1454458.

3 Hasegawa T, Murata S, Kagimura T, Omae K, Tanaka A, Takahashi K, Narusawa M, Konishi Y, Oniki K, Miike T. Characteristics and transition of sleep-wake rhythm in nursery school children: The importance of nocturnal sleep. Clocks Sleep. 2024;6(4):668-681. doi: 10.3390/clockssleep6040045.

4 Chodowiec A, Tarasewicz M, Łokić A, Kazberuk M, Panasiuk A. Biological rhythms of the gut and microbiota. Prz Gastroenterol. 2024;19(1):18-22. doi: 10.5114/pg.2023.132437.
伊藤明子(いとう・みつこ)

赤坂ファミリークリニック院長/小児科医/MD, MPH/BCIA認定ニューロフィードバック認定医
NPO法人Healthy Children, Healthy Lives代表理事。

東京外国語大学卒、帝京大学医学部卒、東京大学大学院医学系研究科修了。
医師になる前から同時通訳者として天皇陛下や歴代首相、米国大統領の通訳を務め、現在も医学系会議を中心に活動している。通訳の仕事をしながら2児をもうけたあと、40歳で医学部を受験し、医師に。卓越した英語力を武器に、海外の学術論文から日々最新の情報をアップデートしている。メディア出演も多く、わかりやすい説明と親しみやすい人柄で子どもはもちろん、その親からの信頼も厚い。著書に『医師が教える 子どもの食事 50の基本』(ダイヤモンド社)などがある。