忙しい朝、「子どもに何を食べさせればいい?」と悩む家庭は多いのではないだろうか。成長期の子どもにとって、とくに意識したいのが、朝ごはんでのたんぱく質である。なかでも卵は、手軽に食べられる身近なたんぱく源だ。しかし、同じ卵でも「どう調理するか」によって違いがあるという。では、朝ごはんの定番にするなら「半熟卵」と「固ゆで卵」、どちらがいいのだろうか。『医師が教える 子どもの習慣50の基本』から一部抜粋してお届けする。(ダイヤモンド社 書籍編集局)

【小児科医が教える】健康によいベストな朝食は、「半熟卵」「固ゆで卵」どっち?Photo: Adobe Stock

朝ごはんのたんぱく質は大事!

 たんぱく質が筋肉を作ることはよく知られています。たんぱく質は筋骨格(きんこっかく)の材料なので、摂取が少なければ体の大きさにも関わります。それだけでなく、神経伝達物質(脳内の情報伝達に使われる化学物質)である脳内ホルモンの材料でもあるので、たんぱく質をしっかり摂ることで脳の働きにも、情緒の安定にも役立ちます。

 ほかに免疫にも必要ですし、健康な皮膚、つまり美容にも必須です。健康と情緒の安定を保ち、きれいな肌を作り、身長を伸ばすためにも、たんぱく質をしっかり摂りたいものです。

 たんぱく質は、体のなかで蓄えておくことができず、たえずターンオーバー(代謝回転)されていくので、1日のなかで朝ごはん、昼ごはん、夕ごはん、場合によっては間食・補食でも摂りましょう。年齢、性別によって適切な摂取量は異なりますが、およそ手のひら(指先まで)1杯分のたんぱく質食材(卵、魚、肉、大豆食品など)が摂れるとよいです。

 とくに朝ごはんのときに摂るたんぱく質は時間をかけて代謝され、脳内ホルモンの材料として使われます。魚や肉など固形の食材でなくてもかまいません。最近は高たんぱくのヨーグルト(脂肪ゼロのタイプがよい)がスーパーなどでも複数販売されているので、忙しい朝におすすめです。とにかく「朝ごはんのたんぱく質は大事!」と覚えておきましょう。

朝ごはんには、8分ゆでの半熟卵がイチオシ

 栄養価が高く、手軽に摂りやすいたんぱく源は卵です。卵は、生(なま)だとアレルギーが起きやすく消化しづらいことから、加熱した卵料理がおすすめです。そのなかでも栄養面の消化吸収で一番効率的なのは、8分ゆでの半熟卵です。

 フライパンでの目玉焼き、卵焼きもとてもよいですが、調理温度は100℃を超えてしまいます。調理の加熱温度が高いほど「糖化(老化の原因の1つ)」が進むことを考慮するなら、100℃を超えず油も使わずに済むゆでる調理法がおすすめ。とくに8分ゆでの半熟卵がイチオシです。

 ただ、毎回半熟卵では飽きてしまうので、目玉焼きや卵焼きも取り入れ、卵料理が楽しく食べられるとよいですね。

子どもにプロテインを与えてもいいの?

「たんぱく質摂取のために子どもに市販のプロテインを飲ませてもよいですか?」とよく質問されます。大人用のプロテインは悪くはないのですが、添加物や着色料が多い市販品もたくさんあるので、そのあたりは注意したいものです。無添加でアレルゲンフリーのプロテインパウダーも販売されているので、探してみるとよいでしょう。

 当クリニックでも100%えんどう豆からできた無添加のプロテインパウダー(「たんぱくパウダー」)を取り扱っています。我が家ではそれを使って、卵とアーモンドミルクを混ぜてクレープを作っています。1枚ずつラップに包んで冷凍庫に入れておくと便利。平日の朝、冷凍庫から1枚出して数秒電子レンジでチンするだけでたんぱく質が摂れます。朝ごはんの立派なおかずです。小麦粉の代わりに、たんぱくパウダーでお好み焼きや自家製パンを作ったりもしていますよ。

たんぱく質の格差が広がっている?

「たんぱく質の摂りすぎに注意したほうがいいとネットで見たことがあるけど大丈夫でしょうか?」との質問を時々受けます。たしかに子どものときにたんぱく質を摂りすぎると、体重過多になり健康を損なうリスクが上がるという研究があります(14)。

 しかし、実際にたんぱく質を摂りすぎている子ども・家族にはまだ出会っていません。子どもでたんぱく質を摂りすぎているとしたら、運動をあまりしていない子で、体重1kgあたりたんぱく量で2g以上を毎日摂っている場合と考えられますが、毎日それだけのたんぱく質を摂るには、高濃度のプロテインパウダーを大量に摂取するくらいしなければなりません。

 今の日本の子どもたちは、昔に比べると果物や魚の摂取量は減っているものの、統計的には、たんぱく質摂取量が大きく不足してはいません(15)。ただこれは十分摂取できているわけではなく、国が設定している数値が病気にならないギリギリのレベルだからです。

 実際には、近年では経済格差が広がっているため世帯年収に起因する栄養摂取の違いや、親の多忙による食事にかける時間の少なさなどが子どもに影響しています(16)。当クリニックにいろいろな困りごとで来院する子どもたちは、ほとんどがたんぱく質不足。血液検査をしても低い数値が出ます。

子どもの食事、まずはたんぱく質から見直そう

 ヒトが必要とするたんぱく質は20種類のアミノ酸から成り立っていますが、そのうちの9種類のアミノ酸は「必須アミノ酸」といって食べ物または飲み物から摂らないと足りなくなる、摂取が絶対に必要なアミノ酸です。偏食があったり食が細かったりすると不足のリスクが上がります。偏食が重い子や、自閉症の子などにアミノ酸の摂取を増やすことで、自閉症特性の症状が改善するという研究もあります(17)。

 子どもの神経発達、成長(身体的な大きさ)について気になる点、心配な点があるようなら、今より少し多めのたんぱく質を摂ることを検討してよいと思います(18)。

14 Xiong T, Wu Y, Hu J, et al. Associations between high protein intake, linear growth, and stunting in children and adolescents: A cross-sectional study. Nutrients. 2023;15(22):4821. doi: 10.3390/nu15224821.

15 Shinsugi C, Takimoto H. Food consumption trends in Japanese children and adolescents: The National Health and Nutrition Survey, 2001-2019. Foods. 2025;14(8):1392. doi: 10.3390/foods14081392.

16 Horikawa C, Murayama N, Ishida H, et al. Nutrient adequancyof Japanese school children on days with and without a school lunch by household income. Food Nutr Res. 2020;64:5377. doi: 10.29219/fnr.v64.5377.

17 R J, G G, N U, A KC. Evaluating the impact of essential amino acid-rich nutrition intervention on children with autism spectrum disorder: A randomized trial protocol. MethodsX. 2025;14:103300. doi: 10.1016/j.mex.2025.103300.

18 エコチル調査大阪ユニットセンター. 運動をしている子どものたんぱく質のお話. [cited 2026 Jul 31]. Available from: https://www.ecochil-osaka.jp/column/food/page-15622/
伊藤明子(いとう・みつこ)

赤坂ファミリークリニック院長/小児科医/MD, MPH/BCIA認定ニューロフィードバック認定医
NPO法人Healthy Children, Healthy Lives代表理事。

東京外国語大学卒、帝京大学医学部卒、東京大学大学院医学系研究科修了。
医師になる前から同時通訳者として天皇陛下や歴代首相、米国大統領の通訳を務め、現在も医学系会議を中心に活動している。通訳の仕事をしながら2児をもうけたあと、40歳で医学部を受験し、医師に。卓越した英語力を武器に、海外の学術論文から日々最新の情報をアップデートしている。メディア出演も多く、わかりやすい説明と親しみやすい人柄で子どもはもちろん、その親からの信頼も厚い。著書に『医師が教える 子どもの食事 50の基本』(ダイヤモンド社)などがある。