気温40度を示す電光掲示板写真はイメージです Photo:PIXTA

「最高気温45度」「猛暑日が2カ月以上」「年間の3分の1が熱帯夜」――。これはSFの話ではない。地球温暖化がこのまま進めば、2100年ごろの日本で現実に起こり得る未来だ。北海道から沖縄まで、私たちが知っている「日本の夏」はどこまで変わってしまうのか。気候モデルが描き出す、想像を超える猛暑の実態を見ていく。※本稿は、東京大学大気海洋研究所気候システム研究系准教授の今田由紀子『異常気象の科学 猛暑・豪雨・大雪のしくみと将来予測』(講談社)の一部を抜粋・編集したものです。

パリ協定から10年
温暖化はどこまで進んだ?

 2015年のパリ協定では、産業革命からの気温上昇を1.5℃以内に抑えることが目標に掲げられました。それから10年の月日を経て、現状はどうなっているでしょうか?

 2023年後半以降、約1年半以上、世界平均気温の上昇幅が1.5℃を超えた状態が持続していました。2024年の世界平均気温は高温の記録を更新し、はじめて年平均で上昇幅が1.5℃を超えました。

 瞬間的に上昇幅1.5℃を超えた状態では、パリ協定の目標が達成できなかった、ということにはなりませんが、上昇幅が1.5℃を下回らない状況が数年持続するようになると、いよいよ産業革命時の気温から+1.5℃となる世界が現実味を帯びてきます。

 では、これまでに温室効果ガスの排出量はどのように変化してきたのでしょうか?図1は、過去から現在までの人間活動による温室効果ガスの年間排出量と、将来の推移の推定値です。

図表6-1 温室効果ガスの年間排出量の推移と将来の見通し同書より転載 拡大画像表示

 産業革命以降、温室効果ガスの排出量は着々と増加しており、2023年には二酸化炭素換算で57.1ギガトンという過去最高値を記録しました(1ギガトンは10億トン)。

 パリ協定以降、各国でさまざまな施策が実施された効果もあり、増加傾向に多少の減速が見られますが、このまま現状維持を続けても温室効果ガスの排出量が減少に転じることはなく、各国が掲げた削減量の約束がすべて実現したとしても、上昇幅を2℃以内に抑えることすら難しい状況であることがわかります。

2100年の日本列島で
35度超えの猛暑が広がる

 このような状況を鑑みても、カーボンニュートラル達成までは茨の道であると言わざるを得ません。

 世界平均気温が産業革命時から+2℃を超えると予測されるのは、2050年頃ともうすぐそこに迫っています。また最悪の場合、2100年頃には+4℃の気温上昇となってしまう可能性もあります。

 そうなったとき、私たちの暮らす日本列島の気候はどうなってしまうのでしょうか?

 より具体的に、将来、温暖化した地球でどのような異常気象が待ち構えているのかを、気候モデルによる将来予測シミュレーションをもとに見ていきたいと思います。

 地球温暖化がさらに進行すれば、猛暑が一層深刻化することは誰でも想像できる未来でしょう。図2は、シミュレーションで予測される2100年8月のある日の天気予報の例です。

図表6-2 2100年8月のある日の最高気温予報同書より転載 拡大画像表示

 北海道と新潟を除き、日本全国ほとんどの地点で35℃超えの猛暑の予報、札幌ですら猛暑日に迫る34℃が予想されています。東海地方では40℃を超える地域もあり、酷暑で有名な静岡県浜松市の最高気温は、フェーン現象の影響で45℃近くまで上昇すると見込まれます。