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シリコンバレーで考える 安藤茂彌

国を挙げて研究開発投資に邁進する韓国
日本が対抗していくには明確な産業振興策が必要だ

安藤茂彌 [トランス・パシフィック・ベンチャーズ社CEO、鹿児島大学特任教授]
【第70回】 2013年8月9日
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 R&Dに従事する研究者数のランキングで見ると、韓国は28万人と世界第6位にある。(日本の研究者数は65万人と米国、中国に次いで第3位)。これを人口比で割り返すと72万人になり、若干ながら日本を凌駕する。

 博士号の取得者は8万4000人いる(2011年)。このうち5割が国の研究機関で働いているが、2割が企業で働いている。この2割の人材の大企業への集中度は高く、売上高上位20社で働いている人が48%に達する。ちなみに、サムスン電子には4900人の博士がいる。他方で、中小企業の人材誘致の動きも活発化しており、社内に研究所を設立した中小企業数は2001年の8200社から2010年には2万600社に急増しており、中小企業の技術高度化が進むと予想される。

 人口100万人当たりの博士号取得者数を見ると、韓国204人に対し、日本は131人である。米国の大学院への留学も盛んで、1989年から2009年の間に理工系で博士号を取得した人数は、韓国人2万1800人に対し、日本人は3800人しかいない。日本人の若年層は理工科離れを起こしているのに対し、韓国では理工系への傾斜が強まっている。

 韓国の大躍進の成功例として披露されたのはサムスンだった。サムスンの人事評価体系では、中核となる人材を3種類に区分けしているという。「スーパー人材」、「エース人材」、「高潜在力人材」の3種類で、「スーパー人材」は世界のどこでも通用するトップレベルの人材で、「エース人材」はそれに次ぐ人材で、「高潜在力人材」は潜在力が高いが、まだ能力が発揮されていない人材を指す。「スーパー人材」は約3割いるという。

 それぞれのレベル内での競争は激しく、同じレベルであっても給料の差は3倍にもなる。いかにレベルが高くても、業績を上げなければ、出世・給料ともに頭打ちになり、時には減額されることもあるという。厳しい競争社会である。

 日本では、シャープ、パナソニック、ソニーの凋落と対比して、サムスン、LGの躍進が取り上げられることが多い。日本企業の社員のサムスンへの転籍が話題となり、転籍に伴って日本の最先端の技術が流出したと報道される。これも事実であると思われるが、韓国自身が単なる技術模倣の時代から、独自技術集積の時代に入っていることを忘れてはならない。その優位性は今後更に高まるのではないかと危惧される。

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安藤茂彌
[トランス・パシフィック・ベンチャーズ社CEO、鹿児島大学特任教授]

1945年東京生まれ。東京大学法学部卒業後、三菱銀行入行。マサチューセッツ工科大学経営学大学院修士号取得。96年、横浜支店長を最後に同行を退職し渡米。シリコンバレーにてトランス・パシフィック・ベンチャーズ社を設立。米国ベンチャービジネスの最新情報を日本企業に提供するサービス「VentureAccess」を行っている。VentureAccessホームページ

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シリコンバレーで日本企業向けに米国ハイテクベンチャー情報を提供するビジネスを行なう日々の中で、「日本の変革」「アメリカ文化」など幅広いテーマについて考察する。

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